〈コラム〉リファレンス・ポイント 本質を見失わず、自分自身の目標を

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第8回

先日、ペンシルバニアのアーミッシュ・コミュニティーに行ってきました。もともとスイスから生まれたキリスト教と共同体にある厳格な規則があるメノナイトの一員のヤコブ・アマンさんが、教会の純粋さを保つために、他のグループから離れて暮らすいっそう保守的な派をつくり、彼の名前を取って、アーミッシュと呼ばれているようです。
アーミッシュの人たちは、基本的に電気や自動車など現代技術を使わずに、17世紀の移民当時の農耕や牧畜で自給自足の生活様式を保っています。移動は自転車や馬車を使います。道路法規上、馬車にもウインカーを付けなければならないのですが、最小限必要な電気は水車や風車により蓄電池を充電して使用しています。現代文明をすべて否定しているわけではなく、自らのアイデンティティを喪失しないかどうか検討した上で必要な技術だけ取り入れているらしいです。
環境に影響されやすい私は、アーミッシュ村の広大なトウモロコシ畑を見ながら、自分の価値観や満足というものについて考えさせられました。
アメリカや日本の現代社会は、競争という色が濃いように思います。周りとの比較を繰り返しているうちに、自分の本当の満足のポイントがずれてくるような気がします。意思決定論の基礎に「リファレンス・ポイント」という考え方があります。人が物事の価値などを判断する時に比較対照とする水準のことです。例えば、ある人がオリンピックを機会にテレビを買いに行ったとします。少し前に50インチのテレビは1500ドルほどで売られていました。その知識を基に、お店に行くとなんと900ドルで売られています。これは安いと思い買いました。早速持ち帰り、スイッチを付けると画面も大きく綺麗で大満足です。友人を呼んできて、このテレビを900ドルで買ったと自慢していると、ちょうどコマーシャルで、同じテレビが600ドルでセールされていることを知ってしまいました。友人たちは大笑いです。そして、満足感はどこかに飛んでいきました。なぜでしょう。リファレンス・ポイントが変わってしまったからです。比較対照が1500ドルから600ドルに下がったことで、自分が損をした気になってしまいました。でも、実際、大きなテレビでオリンピックを見るという目標は果たしています。
何に満足をするかは人それぞれです。周りとの比較も大切ですが、本質を見失わず、自分自身の目標をしっかり持ち、満足のいく成功を手に入れたいものです。
(次回は10月13日号掲載)

(「WEEKLY Biz」2012年9月8日号掲載)
takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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