〈コラム〉シグナリング ビジネスの交渉にも非常に大切

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第9回

経済用語にシグナリングという言葉があります。これは商品やサービスについての情報が買い手に十分に与えられていない時(情報の非対称性がある時)、より多くの情報をもつ売り手側が、商品やサービスの良さをアピールするシグナルを発することをいいます。例えば、3年ほど前に日本のファストフードチェーンが新商品のハンバーガーを売り出す時に、当日中なら返品有りという企画を行いました。今までのおいしい、安い、などの宣伝ではなく、返品有りというサービスから、“この商品には絶対的な自信があります“というシグナルを出して大きく売上を伸ばしました。ちなみに、この企画は5%の返品率を見込んでいたらしいですが、実際は0・2%だったそうです。
商品を売り込むだけでなく、自分自身をアピールするシグナリングもあります。例えば、刺青とタトゥーです。肌に墨を入れるという意味では同じ行動なのですが、シグナリング的には意味が全然違います。実際、彫師(刺青職人)に言わせると刺青は隠す日本文化で職人が彫るもの、タトゥーは見せる西洋文化でタトゥー・アーティストが描くものらしいです。若い女性に聞いてみても、ファッション的に、タトゥー=ポジティブ、刺青=ネガティブという意見があるようです。私のなりの解釈ですが、刺青は物語や意味のある一枚絵で全身を包み込むように彫ることから、長時間、激痛を伴うようで“根性があり、気合いが入っていて、怒らせると怖い”というシグナルを受け取っています。それに比べ、タトゥーは面積は少ないと思いますが、痛いのには変わりないと思いますので“お洒落に気合いが入っている人”というイメージを受け取ります。どちらにしても、初対面でも、その人に対しての印象に影響することは確かです。
ビジネスで成功している友人がいるのですが、日ごろは仕事中でも普通のポロシャツなどを着ています。しかし、いざ大切な交渉などになるとオーダーメイドのスーツ、靴、高級時計を身に着け、交渉に臨むらしいです。それが誠意を表すシグナルであり、逆に相手がそれなりのシグナルを発していなければ交渉成立の可能性は下がるようです。私はそれまで高級な服や時計は自分自身の満足のためという考え方がありましたが、変わりました。このように、適切なシグナリングを行うことは、ビジネスの交渉にも非常に大切です。皆さんもシグナリングで、良いところをアピールしてください。 (次回は11月10日号掲載)

(「WEEKLY Biz」2012年10月13日号掲載)
takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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