「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第16回
私は関西出身なので、小さい頃からよくお好み焼きを食べたものです。イカ玉、ブタ玉は定番ですが、もち、チーズ、さらにはチョコレートという選択もあるお好み焼き屋がありました。ただし、流行っていたかは憶えていません。焼きあがったら、ソース、マヨネーズ、そして、青海苔、鰹節を振りかけて食べます。熱いので鰹節が踊っているように見えるのが不思議でした。それはともかく、マヨネーズが少なくなると容器から出しにくいので、出口に落ちてくるように逆さまにして置いたものですが、ある日、私が「どうせ、最後に逆さまに置くのなら、もともと逆さまに置ける容器にしたらいいのに」というと、母は「昔から容器はこういうものなの」と答えました。
30年前の会話ですが、アメリカに住んで最近、逆さまの容器を使っているマヨネーズ、ケチャップ、そして歯磨き粉まで、よく見かけます。30年前なら特許が取れていたかもと悔やみますが、使いやすいものを恥ずかしがらずに提案するというのも楽しいものだと思います。それには、枠にとらわれず、発想の豊かさを鍛えることが大切です。
最近、娘はテニスに夢中なのですが、上手になったからといって努力を怠るとライバルに抜かれるという例として、皆さんもご存知の昔話“うさぎとかめ”の話をしました。そして話し終わった後に、「うさぎとかめのどちらになりたい?」と聞いたのですが、もちろん、親としては“努力して勝利を勝ち取ったかめ”という答えを期待していました。しかし、娘は“昼寝をしないうさぎ”と答えました。確かに最強です。二つの選択肢の中で考えず、私の中では最も良い答えだと褒めましたが、これこそが枠に捕らわれない発想力だと思います。
受験のテストで3択問題など答えを選択する形式が増えたせいか、人に与えられた答えの中からしか選ぶことができないと思ってしまいがちです。ただ、ビジネスについては、決まった答えがあるとは限りませんので、周りの人が言っている選択肢を出してきても、もう一度本当にその選択肢しかないのか考えることも大切です。もし営業会議で、今期の戦略は販売量を増やすか、利率を上げるかと聞かれたとします。すぐにどちらかで答えを出すのではなく、市場の状況を確認して、利益額が最高になるように販売量と利率の予算を立てますといえれば、見直されるかもしれません。皆さんの新しい発想で周りを驚かせてください。
(次回は6月8日号掲載)
(「WEEKLY Biz」2013年5月11日号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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