〈コラム〉販売数量予測の面白さ 過去の分析を未来の発想に

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第28回

私は以前、食品ディストリビューターの発注担当を経験したことがありますが、とても難しかったことを憶えています。どれくらい売れるか、自分なりに販売予測を立てて販売数量を決定するのですが、最初の頃は、過去の月販売データをみて発注しました。過去のデータが出るのならば、その通りの数を発注すれば良いと思うかもしれませんが、そう簡単ではありません。例えば、ある商品の去年のデータを見ると5月の販売数は100ケースだったので、その数字をオーダーしたとします。
・商品が売れ残ったケース
(1)去年の5月はうちの会社だけこの商品を輸入したので動きが良かったが、今年は競合他社数社が輸入し、マーケットが飽和してしまった。
(2)去年も人気がなく、全然売れなかったが、賞味期限が切れる前の5月に赤字で処分セールを行ったので100ケース売ることができた。
(3)去年は、ある団体がイベントで使うので特別発注をしたが、今年は発注されなかった。
・逆に、売り切れて
しまったケース
(1)去年は実は200ケースの注文があったが、100ケースの在庫しか持っていなく、売り切れていた。
(2)日本の情報番組で健康に良いと宣伝され、人気爆発になっていた。
(3)営業担当者が顧客の広告に掲載して大量にオーダーをとった。
このように、初年度に発注担当をする場合、過去の数字だけに頼ると失敗する確率が高いです。なぜならば、去年の販売数の背景を知らないからです。実は過去の数字の中には、たくさんのストーリーが隠されていたりします。2年目からは1年目の状況がだいたい分かるので、過去の数字も少し参考にできるようになります。ただ、背景を探り、発注に慣れてくると逆に「販売数量を作る」という思考に変えることができます。先程取り上げた例で行くと、新しい商品を持ってくると同業他社がいない場合は100ケースほど動かせることや、日本の情報番組をチェックしてこちらのトレンドに組み入れること、そして、在庫が多い場合は、イベントや大きな団体に売り込んで売りさばく手法もあることなど、失敗をして学ぶこともあります。
最終的に私がたどり着いたのは、営業担当者から市場のフィードバックをもらったり、イベントの企画など、顧客を巻き込んでの販売計画が、適格な発注数量決定のポイントでした。過去の分析から学び、それを未来の発想に結びつけることがビジネスのツボだと思います。
(次回は6月第2週号掲載)
takeshi%20001[1]〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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