〈コラム〉Dr. Clara Lee「歯のおはなし」15回

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I Miss My Mother

お母さんが恋しいよ

今は「ユーチューブ」でいろいろなものを見ることができます。DIYものから、さまざまな分野の映像が満載。私のお気に入りは“The Chestnut Tree”というアニメです。少女時代の母との思い出を描いた物語は何回見ても、涙が出てきます。私の母は54歳の若さでこの世を去りました。私は歯科大に進学していましたが、まだ1年生でした。鼻咽腔がんと診断された時は、もうすでに末期。母は4人の子供たちの定期健診は欠かしませんでしたが、自分の事はいつも後回しにしていたのです。
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母は最初、喉の奥に違和感を感じていたらしいですのが、1カ月ほどたつと首のリンパ節が腫れ出したので漢方医の所に行き、喉に湿布薬を貼って帰宅したことを今でも覚えています。しかし、一向に良くならないので、ようやくホームドクターに診てもらうことにしました。そこで生体検査をし、その結果、末期鼻咽腔がんと診断されたのです。
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口腔(こうくう)がんは進行が早いがんで、米国国内で毎年約3万5000人が罹患(りかん)し、その半数が5年以上生存するとされています。喫煙、飲酒は口腔がんにかかりやすい危険因子だと言われていますが、がん患者の25%は禁煙者、飲酒をしないグループです。喫煙、過度の飲酒は控えた方がいいのは言うまでもありませんが、口腔がんの早期発見には歯科医による定期検査を受けることをお勧めします。そして、日ごろからご自分の口の中に関心を持ちましょう。口腔内の粘膜に何か異常(突起物、色の変化など無痛が多い)を発見し、それが2週間経過しても治らない場合や治ってもまた同じ症状が繰り返される場合は歯科医の診察を受けましょう。
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私の母は化学療法、放射線療法を耐え、つかの間の回復時を経て亡くなりました。口腔がんと診断されて、たった2年しかたっていませんでした。歯科大の卒業式、結婚式、子供たちの誕生と大きな人生の節目に、今は亡き母がいてくれたらと何度想像したでしょう。
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歯科医による定期検診は歯だけを診ているわけではありません。歯科会は口腔がん早期発見に力を入れています。全ての口腔がんが定期検診で発見されるわけではありませんが、検診で異常が見て取れた場合、生体検査を経て診断が下されます。定期検診をついつい延ばしている皆さん、ぜひ早々と受けてください。あなたの家族のためにも!
(次回は1月14日掲載)(「WEEKLYBiz」2011年12月10日掲載)
〈プロフィル〉Dr. Clara Lee ニューヨーク大学歯学部卒業。ニューヨーク大学ブルックデール病院でチーフレジデンス修了。13年以上に及ぶ臨床経験は一般歯科、コスメティック、インプラントを含む。インビザライン認定医。Waterside Dental Care院長として古山医師と共に、多くの日本人患者さんを治療。Dentistryをこよなく愛している。記事提供:Waterside dental Care(Tel:212-683-6260)

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