米国の原爆教育での日本の子どもの役割
犠牲者や被害の実態を正しく理解し伝えることが重要
日本の報道で8月6日や8月9日が何の日か知らない若者がいることを知りました。戦後66年が過ぎ、どんどん第二次世界大戦が風化していることの証でしょう。しかし、これはとても悲しいことだと思います。今年は東日本大震災による福島原発事故のために、多くの人々が放射線に対する不安を感じています。また、原爆も原発も結局は同じように危険であることを痛感しています。それだけに二つの原爆の日はとても重要です。
唯一の被爆国である日本は核兵器の廃絶を訴えながら、一方で国を挙げて原発を推進してきました。国民には廃止すべきという意見が多いようですが、原発を継続するか否かという問題は、未来を担う子どもたちに真剣に考えさせるべきでしょう。そのために原発の仕組みや長短を、その他のエネルギー源と比較して学ぶことが必要です。と同時に、原爆の悲惨さを十分に理解させることも大切です。原発を動かす技術は容易に核兵器に転用できることも教えるべきでしょう。原爆の悲劇は遠い昔のことかもしれませんが、今自分たちが同様な危険に直面していることを実感すれば、原爆の日を知らないということにならないと思います。
ところで、米国にて教育を受けている子どもたちは、原爆は恐ろしい兵器だということは学んでいますが、米国人には原爆投下を正当化する考えも目立ちます。原爆は第二次世界大戦を終わらせるため、また多くの米国人の命を救うために必要だったと記述している教科書もあります。日本国民すべてが武装して抵抗したため仕方なかったと記すものもあります。もちろん米国の教育は教科書を教え込むのではなく子どもに考えさせますので、原爆投下の必要性についても議論が行われていることでしょう。
このような議論の場で、日本の子どもは原爆の犠牲者の実態を正しく伝えることができるように、広島や長崎の被害の状況を正しく理解しておくべきだと思います。米国の教師や子どもにとって、被爆国の日本人から提供される情報はとても貴重なのです。広島や長崎の犠牲者の多くは兵士ではなく、女性や子どもであったこと、被爆後数十年間苦しんで亡くなった人やいまだに病気と闘っている人がいることなどは、ぜひとも伝えてほしいことです。このためには、日本のニュースを見聞きし、日本の教科書や原爆関係の本を読むことなどが大切です。そして、犠牲者や被害の様子の写真、被爆者の声などを伝えることによって、より鮮明に原爆の悲惨さを実感してもらえるでしょう。このように日本の子どもは米国の原爆教育にも重要な役割を果たすことができると思います。
(次回は9月24日号掲載)(「WEEKLY Biz」2011年8月27日号掲載)
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