海外で日本の歴史や地理を学ぶ意義
日本独自の文化や日本人の考え方が理解できる
2月11日は日本の国民の祝日「建国記念の日」です。建国をしのび、国を愛する心を養う日です。では、日本の建国はいつなのでしょうか。実は、正確な建国の起源は分かっていません。ただし、『日本書紀』に基づき、初代天皇の神武天皇が即位した日とすることが一般的な認識です。その日から数えると今年は建国2672周年になります。この間で天皇が政治の実権を握った期間はそんなに長くはなく、政体も何度も変わりますが、日本人は天皇を奉り続けてきました。このような歴史を持つ国は世界でもあまり例がありません。
それは、天皇の祖先が神であり、日本人が神を大切にしてきたからです。日本にはあらゆるところに神が存在します。海や山、森や湖、池、岩、田畑や道端の草木、家の柱や台所、便所などにも神が宿ると信じられていますし、集落にも守り神がいます。そのため必ずと言っていいほど近所に神社がありますし、家の中にも神棚があったり、神社のお札を貼ってあったりします。各地で行われる祭りの多くは、神に豊作や大漁を願ったりそのお礼をしたりしたことに由来しています。また、世の中に貢献した人や非業の死を遂げた人が神となることもあります。例えば、日光東照宮にまつられている徳川家康や太宰府天満宮や天神神社の菅原道真などです。
現代社会に暮らす人々にとって、神社は願い事のある時にお参りする程度ということも多いのですが、食事の前後の言葉の「いただきます」や「ごちそうさま」は、食材に宿る神への感謝の気持ちを表していると言えます。また、ものを大切にすることや身の回りをきれいにすることを子どもに教える際にも同様な気持ちが込められています。あいさつやお礼の際に頭を下げる習慣も神への敬意を示す動作から身についたのでしょう。このほか、喧嘩を避けて仲良くしようとすることや勝ち負けよりも過程を重視し敗者も重んじることなど、日本人は他の民族とは異なるものの考え方があると言われています。このようなものの考え方は、日本人が特有な歴史や風土の下で生まれ育ってきたから身についたものです。
海外で生まれたり、長く暮らしたりしている子どもの場合、日本人の血をひいていたとしても、また、日本語が堪能であったとしても、日本人とのコミュニケーションがうまくできなかったり、日本の社会になじめなかったりすることがあります。その問題を解決し、日本や日本人社会とかかわって生きていくためには、日本の歴史や風土(地理)を学習し、日本独自の文化やものの考え方を理解することが重要なのです。
(次回は3月24日号掲載)(「WEEKLY Biz」2012年2月25日号掲載)
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