門戸が狭まりつつある帰国生大学入試
受験校の情報を把握し、合格できる実力を身につけることが大切
サンクスギビングのころ日本では、受験生がラストスパートをかけています。大学受験生にとっては、第一関門である大学入試センター試験まで2カ月を切りましたし、その後に行われる私立大入試や国公立大二次試験の対策も講じねばなりません。これからは四当五落(睡眠時間を四時間に削った受験生は合格でき、五時間睡眠した受験生は合格できないという意味)を念頭に置いて励む受験生も多いことでしょう。一方、帰国生の多くは4月の入学を待つのみという余裕の時間を過ごしています。帰国生大学入試は9月からスタートし、この時期には一般入試と同じ2月下旬に入試を行う国公立大以外、つまりほとんどの私立大と約半数の国公立大の入試が終了しているからです。
帰国生入試は海外の学校で学んだ生徒が不利にならないよう配慮がされている特別入試です。特に大学入試では、入試日が早いことのほかに、入試科目数が少ない(文科系は英語と小論文、理科系は数学、理科と小論文が多い)、国公立大でも大学入試センター試験が免除され、複数校の受験ができるなどの特典があります。
ただし、良いことばかりではありません。海外の高校在籍必要年数、海外の高校の卒業、卒業していない場合は日本の高校での在籍期間、TOEFLやSATなど統一試験のスコアなど、大学・学部によって異なる様々な条件が定められています。また、すべての大学で帰国生入試が行われているわけではありません。例えば、京都大は法学部と経済学部のみ、大阪大も文科系学部では外国語学部のみしか実施していませんし、神戸大や同志社大や立命館大は全学部で実施していません。
さらに近年は帰国生入試を廃止する大学が相次いでいます。2012度入試から東京工業大が廃止し、13年度入試からは名古屋大法学部、千葉大工学部、山口大人文学部と共同獣医学部、琉球大医学部医学科、14年度入試からは東京農工大農学部共同獣医学科、山口大経済学部と工学部が、そして15年度入試からは早稲田大政治経済学部が廃止するという状況です。
このような動きの要因として、まず受験者数の減少が挙げられます。少子化により受験生全体が減少しているのに加え、長引く不況の影響で海外駐在員の若年化が目立ち、高校生の数も年々減少しています。このために、受験生が少ない大学・学部にとっては特別な入試をすることが負担になっているのです。また、国内生との学力差があるという問題も否めません。帰国生には日本語力が不足しているとか、日本の高校での履修内容を理解できていない生徒も目立つようです。さらに、文部科学省の推進するグローバル30というプロジェクトの影響もあり、帰国生よりも留学生の入学に力を入れる動きも見られ、今後は大学入試を目指す帰国生にとっては厳しい時代となりそうです。とは言っても受験校は少なくはありませんので、情報を的確に把握し、合格できる実力を着実に身につけることが大切です。 (次回は1月26日号掲載)(「WEEKLY Biz」2012年11月24日号掲載)
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