〈企業トップインタビュー〉さくらライフセイブアソシエイツ 清水直子・代表取締役社長

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日本では〝困難〟な医療を必要とする病者に個別の「海外治療」を紹介、フォローアップ

自らの背景生かし日米の懸け橋に患者や家族の希望の道になれば

Ms. Naoko Shimizu(for interview1) 日本では治療法が確立されていない、また法規上認められていない治療や医療を必要とする病者に「海外治療」という方策を紹介。米ニューヨークを拠点に、これまで多くの命を救い、育んできた医療コンサルティング会社「さくらライフセイブアソシエイツ」の清水直子代表取締役社長。前職で築いたネットワークと信用を生かし、常に患者の立場に立って二人三脚で献身する姿勢が賞賛され、感謝の手紙は後を絶たない。2003年の設立以来、携わったコンサルテーションは約1500件。「この仕事が私の生まれ持ったミッション」と語る清水社長にお話を伺った。
◇ ◇ ◇
―御社が提供しておられる医療コンサルティングとは。
清水社長 主に日本で治療を受けることのできない日本人の患者さんへ、米国の最高権威とされる医療機関や医師による優れた治療を紹介するお手伝いをしています。
私どもは一つの症例に対して特定の機関や医師と提携しているのではありません。患者さま一人一人と十分話し合った上で、米国にある6012の医療機関、81万人の医師の中から、個々の症状や希望に合ったトップの医療機関、医師、そして最善の治療をご紹介しています。また、渡航や現地での滞在の手配、病院への同行、通訳、そして帰国後のフォローアップまで、海外治療を包括的にバックアップいたします。
―これまでどのようなケースに対応されてきましたか。
清水社長 過去3年の実積では、生殖医療関係ケースが50%、がんを含む難病が35%、飛蚊症が10%、臓器移植が5%です。
例えば30歳代の女性に多い子宮頸(けい)がんは症状が現れにくいため、気付いた時には日本では手の施し用がなく、最後の手段として海外治療を選択されることが多いです。また、着床前診断、卵子ドナーや精子凍結、代理母出産などは、日本では困難なため、海外での実現を選択される方が増えています。
―清水社長はどのような経緯で同社を設立されたのでしょうか。
清水社長 私は以前、米大手金融機関で機関投資家らを相手に日本株式市場の情報や分析を提供していました。ウォール街のピークも経験し、充実した日々を過ごしていたのですが、日本でトップアナリストとして活躍していた上司が大病を患い、会社側が米国の医療機関など必死に探していることを知った時、「会社がバックアップしてくれない個人はどうなるのか」という疑問が生まれたのです。「バイリンガル、バイカルチュラル、バイエデュケーショナルという背景を生かして日米の懸け橋になる仕事がしたい」、そして「人はそれぞれミッションを持って生まれてきたのだ」と常々思っていた私は、素晴らしい米国の医療の情報を日本に発信し、病などで悩む日本人の手助けをすることが私のミッションなんだと確信したのです。
―患者さんとのやりとりをお聞きすると、清水社長の親身で良心的な対応、そして透明性のあるプロセスに絶対的な信頼をおいてらっしゃるのが分かります。
清水社長 皆、さまざまな手を尽くした後、藁(わら)にもすがる思いで連絡をしてこられます。「息子が治療法のない奇病と診断されどうしていいか分からない」「何度も体外受精を試みたが失敗し、でもどうしても子供がほしい」など。海外治療はそれなりのお金が掛かるものですし、患者さまやご家族が安心して治療を受けられることを第一に考え、24時間体制でこまめに連絡を取り合い、現状や結果報告などを行っています。
「無事に手術を終えた」「出産することができた」とのうれしい結果や「妊娠準備をできていることが、私にとってスペシャルなこと」など喜びの声をいただくと、自分のミッションを遂行できていることを実感し、幸せな思いで一杯になります。ときには、希望をかなえることができないこともあります。志半ばで亡くなられた男の子のご両親から「この海外医療のパイプがわれわれの希望であり励みになりました」とお手紙をいただいた際は、自分のしていることは間違いではなかったと思いつつも涙が止まりませんでした。
―清水さんにとって今後の海外治療の課題とは。
清水社長 海外治療には、言葉の壁やロジスティックスの壁、情報の壁と障害もあります。特に、日本では海外治療に関する情報が乏しいため、最初の選択肢として挙げられることは少数です。そのような日本に多くの情報を発信し、海外治療という新たな選択肢の提供に貢献できればと考えております。それが、患者さま本人やご家族の一筋の希望の道としてなっていただければと。
◇ ◇ ◇
〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。2010年、生殖先進医療を手掛ける医療コンサルタントとして取材を受けたNHKの番組が反響を呼び、以降数回再放送される。
(「WEEKLY Biz」2012年11月24日号掲載)

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