対話の力(3)
What(オープン・クエスチョン)
こんにちは。COACH Aの竹内です。前回は、在米20年以上の日本人経営者の方のエピソードをご紹介し、部下にたくさん(頻度と量)話しかけることが組織の活性化につながることをお話しました。では、いったいどんな問いかけや表現がより効果的なのでしょうか。今月はまず“What(何)”を使った質問についてご紹介します。
毎日部下に話しかけているご自分を思い返してみてください。「あのプロジェクトは進んでる?」という進捗確認や、「プレゼン(テーション)にはもっとデータを使った方がいいと思うよ」といったアドバイスをしているのでしょうか。これらが悪いわけではありませんが、状況や関係性、部下のコミュニケーション・タイプによっては、「毎日報告してるのに」とか、「今ちょうどデータを集めてるところなんだけど」と、ネガティブに受け取られたりすることもあるかもしれません。
ここで“What”の質問を取り入れるとどうなるでしょう。前回の社長さんを例にとってお話しましょう。その方は部下に、「プロジェクト成功のカギは何だと思う?」「プレゼンにこのデータを使った目的は何?」などと、部下に自由に話をさせる問いかけをよくなさっておられました。
そう聞かれた部下は、単なる確認やアドバイスではなく、自分の考えを社長は“聞いてくれている”と思うかもしれません。また、その回答がYes/Noではなく、どうにでも答えられるだけに、きちんと考え、整理する必要があります。その結果、自分の言葉で表現しているうちに、「もっと深く検討しなくちゃいけないかも」とか、「このデータではなく、違うデータを揃えた方が目的に適うかもしれないな」と、新たな気づきやアイデアが浮かぶかもしれません。
このような“What”を使った質問は、“オープン・クエスチョン”と呼ばれる自由な回答を求める質問のうちのひとつです。これだけで、部下は上司との会話において、より“考える”ようになり、会話が創造的なものになっていくのです。
皆さんが部下に“What”クエスチョンを問いかけるとしたら、どんな質問をしますか? 部下が“う〜ん”と考え、自分の考えをイキイキと話す表情を見ることができるといいですね。
次回は、この社長さんがよくなさっていた“Acknowledgement”の効用についてお話します。
(次回は3月第4週号掲載)
〈プロフィル〉竹内 健(たけうち たけし)
エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人 への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職
【ウェブ】www.coacha.com/usa/
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