アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第37回
5月に完成した車のタイトルは「ザ・ピンク“いいね”カー」。
夢を集めて映画を作る「集夢計画」の前哨戦として、台湾で開催するアートイベントに向けたもので、5月25日ユニオンスクエアで展示後、6月1日にクイーンズでイベントの開幕式。ニューヨーク州選出の国会議員や市議会議員ら多くの来賓が参加してくれました。
Crystal Window & Door 社の職人が使用した軍手1万枚を貼り付けた“いいね”カーは、労働の力強さと美の融合。これまでアートとは無縁だった人たちを巻き込み、工場の一角で制作した70日。同じことを何十年も繰り返してきた手が生み出す熟練した技術、この労働力が会社を支え、社会を支えています。これから向かう台湾の農村でも、多くの手が野菜や果物を作り続け社会に貢献しています。工業、農業は今も前進の原動力であり、発展の要。力強い労働者の手と創造するアーティストの手を合わせ生み出される作品は、込められた魂の分、見る人は感動を覚えます。
“いいね”カーの展示と同時期、クイーンズ美術館のある公園では万博開催50周年のイベントが行われました。私も2005年の愛知万博に、30万本のペンで作った「智恵の門」を出品したのを思い出します。応援してくれたのはトヨタ自動車で、万博終了後には会長から感謝状までいただきました。トヨタ自動車といえば、20数年前の日本留学時代に何度も足を運んだトヨタ博物館。なかでも、昔の手作業による車はただの乗り物ではない、多元化された総合体としての芸術として何度見ても感動します。この車のように、手作りの車を私も作りたい。素材は人の生活に深く浸透したもの。伝統と科学、現代社会、自然と地球などをテーマに車の造形作品をシリーズとして制作していくのが目下の夢です。応援よろしくお願いします。
(次回は9月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 林世宝(リン・セイホウ) 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】www.facebook.com/lin.shihpao?fref=pb&hc_location=friends_tab&pnref=friends.all