「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第26回
新規でアメリカにレストランビジネスを開きたいというご相談を多く受けます。日本からのレストランチェーンの進出やアメリカの他業界で働いていた方が独立するなど規模や形はさまざまですが、素晴らしいプランを持ってご相談に来られます。メニューなどのアイデアはしっかりしているのですが、計画を数字に落とし込んでいる方はあまりいません。数字的な計画の立て方ですが、利益を出すには、売り上げと比較した経費の目安というものがあります。私の経験からいいますと、レストラン業態や場所にもよりますが、一般的に家賃は売り上げのだいたい10%以下(マンハッタンは15%以下)というのを目安にしています。単純に逆算すると月3000ドルの家賃のレストランは月3万ドルの売り上げが必要だということになります。年中無休だと、1日1000ドル、ということは10ドルの客単価とすれば100人、20ドルの客単価とすれば、50人の顧客の見込みが必要です。家賃だけでもこれだけ考えられますから、これに人件費、材料費などの要因を加えて考えるともっと具体的な計画が立てられます。
ビジネスを実際に始めてみると計画と違ったことが起きることも多いかと思います。例えば、学生の多いボストンに日系グロッサリーストアをオープンした方がいました。夏休みで一時帰国がありますが、逆に短期留学生がくるので、プラスマイナスゼロと思っていたところ、まったく商品が動かなくなりました。原因を調べてみると、日本からの短期留学生は食材を日本から持ってきていたり、せっかくの留学だからと、日本食以外のものをあまり食べないということがわかりました。そのため、夏の売り上げは通常時の半分に減ってしまいました。それとは逆に、嬉しい計画はずれもあります。アイスクリーム屋をオープンされた方の例です。当初の予想では、暖かくなってくる6月位から夏の終わりまでの4カ月間は1日200人を、それ以外の時期は寒くなるので1日50人くらいの来客数を見込んでいました。しかし冬でも1日150人が入り、思ったより減りませんでした。そこで、アメリカの統計を調べたところ、3月から10月までが売り上げが高いシーズンで冬でも1カ月のアイスクリームの消費が月5500万ガロンとすごい消費量ということが分かりました。四季のない地域もあるので、それも原因かもしれませんが、それにしてもすごい消費量です。ビジネスは意外なことが起きるからこそ、面白いのかもしれません。
(次回は4月第2週号掲載)
〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を活かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーまで、幅広く顧客を持つ。【ウェブ】www.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
過去の一覧