アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第103回

「平和の鐘」の模型。(実際の大きさ)高さ2.5メートル、直径1.5メートル
「ウクライナにできるだけ広大な土地を買いたい」。もちろん、「平和の鐘」を中心にした市民の憩いの場建設のためです。
マルハネツィ市は、ウクライナの南東ドニプロペトロウスク州ニコポル地区にある小都市。7月初め、マルハネツィの市長、副市長、国際部のスタッフとオンラインミーティングがあり、私たちがこれまでに行ってきたゴミ収集車の贈呈や孤児院などへの医療品や生活物品の援助などに対して、市長さんから感謝の言葉をいただきました。提案していた土地購入に関しては、「ウクライナの土地は国のもので売ることはできない。しかし、お貸しすることはできます。貸賃は1カ月1ウクライナ・フリヴニャ、契約期間は49年、どうですか?」。ウクライナ側からの申し出は願ってもないことで、土地を購入しなくて良いのであれば、作品制作と建築にかかる費用ですむので当方も大いに助かります。「この方向で契約を進め、プロジェクトをぜひ完成させましょう」と全員一致でミーティングを終了。
土地を借りたら、まず子どもと高齢者のためのセンターを作り、街の福祉に役立ててほしい。中心には「平和の鐘」を設置し、周りはアート公園。終戦後の街の復興、人々の生活の立て直しにアートが貢献できることを、一歩一歩、叶うまで続ける覚悟です。
「平和の鐘」は、ミサイルの破片で作るものときれいな音が鳴る2種類を制作予定。音の鳴る方は、今年中の完成を目指し模型を作りました=写真。台湾の工場での制作費とウクライナまでの運搬費の見積もりは8万ドル。この8カ月で4万ドルは集まりましたが、公園建設までには更にたくさんの人や企業からのサポートが必要。広がれば広がるほど社会的責任も大きくなるため、気を引き締めて取り組んでいきます。
(次回は9月20日号掲載)
〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】