アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第31回
5月26日、毎年恒例の台湾祭がユニオンスクエアで開催されました。私もアーティストとして参加し、白いスポーツカーの形をした「Sun in Action」を展示しました。
車は「前進」のシンボル、太陽のような労働者のエネルギーは発展の原動力、最も単純で素朴かつ写実的な「手作り」などを表現したものです。
Crystal window & door社の協力のもと、自社工場で60日間、朝8時から夜9時まで、職人達が窓を作る傍らで制作。素材はすべて窓の材料を使用。熱でプラスチックを曲げる作業などには熟練工が技術提供してくれるなど、毎日数人の職人が手を貸してくれました。
労働と芸術、力と美の融合。来る日も来る日も窓を作り続ける手、一生懸命働く勤勉な精神、太陽のような情熱を彼らから受け取りました。私は芸術家として千変万化の創造性を込めて車をデザインし、制作しながら、これまで芸術にふれる機会がなかったという彼らにアートの話をたくさんしました。映画を作る「集夢計画」や、携帯電話を集めてもう1台の車を作る「偉大な発明と矛盾」などアートの夢の話を。
こうして完成した作品は単なる車ではなく、新旧、伝統と現代、人種・性別・国籍・宗教を超えた多重の世界観を背景に、私と職人両方の手によって創造されたものであり、労働の精神に敬意を表したものなのです。労働力と創造力は社会経済発展の基本元素。作品の裏にある労働、見えるものと見えないもの。見えないけれど本当に大切なものは何かを、作品を通して考える機会になってくれればいいと思います。
次に予定しているのは携帯電話の車。便利さを求め発展し続けた人類に、自然が警告を発信し続けている現代。地球に優しい商品、ソーラーエナジーの活用、リサイクルを新しいビジネスとして更に人類が発展していくことを願う作品です。皆様ご協力のほどよろしくお願いします。
(次回は8月10日号掲載)
〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】