アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」 第46回
明けましておめでとうございます。
昨年はなかなか充実した年で、年頭から吉報が舞い込み、2万5000個の携帯電話を素材にした「F1(Future No.1)いいねカー」の制作が決定、秋に公開・巡回展と無事終了しました。しかし、この企画終わりではありません。更なる秋の収穫を期待して、東北への夢の種を蒔きたいと思います。
2011年3月の東日本大震災後に当コラムで紹介した「日の出(いずる)国:日本」は、地震の傷跡が残る日本を世界中の国々が応援し、日が昇るように上を向き、より素晴らしい日本へ再生してほしいと願った作品でした。翌年、その上にキャンバスを足し、輝く太陽、新たな生命の誕生、夢と希望に合掌する思いを加え、3年目には絵画の回りに水と時の流れを描き足し、「Sun in Action:グッド、いつも太陽のように」というタイトルで生まれ変わりました。
昨年の夏にようやく福島と仙台を訪ねることが叶い、5年目になっても復興ままならない現状、心情を目の当りにし、私の作品に込められた多くの人の気持ちを現地で共有したいと強く思ったのです。2014年に発表した「ピンクいいねカー」、親指を立てたグッドサインは、働く人を褒める象徴、1万枚の軍手1枚1枚が頑張った証。多くの人の手が頑張っている人をグッドと褒める作品です。「F1いいねカー」は、地球の未来を考え、自然に優しい科学開発、発展を願う趣旨に40カ国以上の人が国境を超えて賛同、協力してくれた作品。素材の数以上の人たちの心が込められた2台の車がもたらすパワーを、被災地の人たちとシェアしたいと願ってやみません。
「堅其志、苦其心、労其力、事無大小、必有所成(意志堅く心を鍛え努力すれば、事の大小に関わらず必ず成功)」。作品が円満に完成するまでもう一歩、皆さん応援お願いします。
〈プロフィル〉 リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。
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