〈コラム〉集夢計画58「恋に上下の隔てなし」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第63回

「希望のツリー」のペニーパーティー会場に来てくれた、希望に満ちあふれた高校生たち。右端が筆者

「30年も行動アートを続けられるのはなぜ?」とインタビューで聞かれたことがあります。「アートへの情熱は恋と一緒。初恋のように毎日が新鮮で、光り輝いていないといいものは作れない。この熱意は最初も今も変わりません」

「希望のツリー」の素材となる使い古された野球のボールは、8歳から80代の人たちの思い出がいっぱい。「恋に上下の隔てなし」というように、年齢や人種、国籍や宗教は関係なく、皆さん愛する気持ちにあふれ、平和を願っています。それらを集結した作品は、協力してくれた全ての人のパワーのかたまり。世界は一つ、戦場ではない。オリンピック会場は、「ドアのない美術館」として、平和のシンボルを設置するのに最高の場となるはずです。

次は母の話。故郷の台湾を離れて30数年。家に帰ると一番喜んでくれて、いつも笑顔で好きなものをたくさん手作りしてくれる母。小さいころからそういう母の無償の愛を感じてきました。今年の初めに台湾に帰った日、母は私のことが分からなくなっていました。食事も作れません。「あなたはアメリカにいる私の子供に似ている」と言い、目の前の私をわが子と認識できないのです。この時から、私の中の母は、30数年前に飛行場で、心配しながらもほほ笑んで見送ってくれた瞬間で止まっています。その笑顔を心に描くと母の愛を感じることができます。瞬間は永遠となり、純潔の愛となりました。皆さんも似たような経験をお持ちではないでしょうか。

恋する気持ち、愛の力は、人間の魂を奮い立たせ、勇気をもたらしてくれます。このパワーを戦争ではなく、自己実現や社会の発展に使ってほしい。戦争には悲しみしか残りません。愛する気持ちを心に持ち続け、未来の幸せにつなげる。これが私の希望です。

(次回は1月第2週号掲載)

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック
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