アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第64回
皆さま、明けましておめでとうございます。
2019年は亥(い)年。亥年の動物は中国では豚、日本ではイノシシと、この年だけ異なります。十二支の起源は古く、中国では今から3000~3500年くらい前より暦の一部として使われ、日本に入ってきたのは西暦550年代とのこと。同じ干支生まれで親近感が湧くのは、旧暦を使うアジア共通の感覚のようです。
昨年の戌(いぬ)年には、ニューヨークのメトロカードで「希望のツリー」のキャラクター犬「ホープ」を作ってご紹介しましたが、写真は今年の豚の模型です。色の異なる学生用やシニア用メトロカードで作るために今もせっせと集めています。数年後にはメトロカード廃止と発表され、その前に十二支の動物12体を完成させたいと思っています。車に乗らない私のポケットにはいつもメトロカードがあり、ニューヨーク中を地下鉄とバスで移動します。アトリエの往復、素材の受け取り、ミーティングといった生活の一部だけでなく、夢を探す入り口、目的のある出口に運んでくれるアートの一部でもあるのです。ニューヨークでのアート人生の記念としてメトロカードの十二支を完成させることを今年の年頭に祈願します。
2017年の2月から始まった「希望のツリー」は、昨年8月に素材となる野球のボール2万5000個が日本から届き、11月には台湾から土台が到着。今年2月の完成を目指して現在制作中です。20年の東京五輪会場への設置には、まだまだ山あり谷ありですが、作品が完成すれば新たな光も見えてくるはず。これまでも、険しく苦しい道のりをあきらめずに進み続けることで目標に到達することができました。このプロジェクトの春もそこまで来ていると信じ、今日もメトロカードで制作現場に向かいます。─冬きたりなば春遠からじ─
(次回は3月第2週号掲載)
〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】
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