アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第68回
アーティストの仕事は「感於内、発於外(心に感じたことを外に表現すること)」で、アートは常に人間の生活と共にあります。表現方法はそれぞれ異なり、平面的な絵画であったり、立体的な彫刻やインスタレーション、映像であったりしますが、アーティストはその作品を昇華の段階、つまり最高値になるまで追求していきます。こうして完成した芸術作品には、人を感動させる美の力があり、アートの価値へとつながっていくのです。
私はキャンバスを社会へ世界へと広げて行動アートを展開し、ドアのない美術館と称して作品を公共スペースに展示してきました。これまで舞台となったのは、銀行の駐車場、ユニオンスクエアパーク、クイーンズ植物園、フラッシングモールQueens Crossingの広場、福岡市市役所広場、台湾高雄市の市民広場、台湾屏東県の果物農家などなど。
さて、今回ドアのない美術館となるのは、ニューヨーク・アップステートのミッドハドソンバレーにあるクリスタルパーク。その一画500平方メートルの広さに、工場から出る廃棄物と過剰生産によって余ったものを半年間集めた5トンのものを使って「天使計画」を制作中。30年の行動アートの集大成になる作品と考えています。
私のアートから発信するメッセージは、一貫して愛と平和。これは一生のテーマでもあります。これまで、私の理念に賛同して支え、サポートしてくれたたくさんの人の善意の気持ちを大切にしながら作っています。この作品を見た人たちが、愛と平和の尊さ、自然との共存を意識し、物を大事にして地球に優しい生活をすることの大切さを感じ、天使が幸せを伝えるように、円満でハッピーな気持ちを拡散できるような、そんな作品を目指しています。完成した暁には、改めて発表いたしますので、皆さんぜひ見に来てください。
(次回は11月第3週号掲載)
〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】