集夢計画72「信念は希望の光」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第77回

「Parts of a Whole」 アーティスト:Lulu Meng、William Harris Galleryで 【作品の詳細】彼女のホームページより:www.lulumeng.space/work/installation-Parts_of_a_Whole-2018.html

「Parts of a Whole」 アーティスト:Lulu Meng、William Harris Galleryで 【作品の詳細】彼女のホームページより: www.lulumeng.space/work/installation-Parts_of_a_Whole-2018.html

新型コロナで百業簫條(多業界の不況)、アート界ではギャラリーや美術館が閉鎖され、発表の機会を失った2020年。暗くなりがちな気持ちを励ます思いで制作した「牛王」は、強くたくましくありたいと願う私の心の形でした(前回のコラム=1月23日号掲載=に掲載)。

Lulu Mengもこの苦境を乗り越えようと必死に頑張っている若手アーティスト。話を聞く機会があったのでご紹介します。

「アートの力は社会を照らすことができる」というのが彼女の信念。パンデミックで仕事をなくした後、生活のために睡眠時間を削り、いくつもの仕事を掛け持って働きながらも制作は続けたそうです。彼女の代表作である「Parts of a Whole」=写真=は、数千個のボタンで人間社会を表現したもの。遠目には同じに見えるボタンが、近づいて見ると一つ一つ違う人の顔。人間社会も、遠くからは人の形しか見えなくても、よく見ると人種、年齢、性別はみな異なり、誰一人同じではない。それぞれ生きる場所、役割は異なるけれど、整然とつながり社会システムの中で共存している。「それぞれの特徴を認め、お互いを大事にしあって、平和共存の社会であってほしい」と彼女は言います。理解しづらいと言われる現代アートですが、この作品では、個々の人間が持つパワーが連綿と連なり、社会を構成するというコンセプトがまぶしい光となって見事に表現されています。

アメリカに来て8年目の彼女。自分の選んだ道は自分で切り拓く、困難な状況になっても制作だけはあきらめない、そういう彼女の生き様が若い頃の私の姿と重なりました。時勢造英雄(時代の勢いが英雄を造る)と言いますが、才能だけでは英雄にはなれません。信念を貫く強い意志があるかないか、「アメリカに来た夢を忘れず、最後までやり遂げるつもりです」という彼女の今後に期待したいと思います。

(次回は5月第3週号掲載)

林世宝〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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