集夢計画73「毎日がEarth Day」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第78回

「ピンク“いいね”カー」2014年、素材:1万枚の軍手(台湾屏東県の美術館広場で)

4月22日はEarth Day。温暖化や気候変動による災害が顕著な昨今、世界中で地球環境を真剣に考える議論が広がっているように見えますが、実際の生活はどうでしょうか? 私は、忙しいとチャイナタウンの弁当をよく買うのですが、安くてボリュームたっぷりに満足した後に残るのは、かさばるプラスチックゴミ。さらに、新型コロナの影響で、デリバリーや持ち帰りが多くなった分、わが家のゴミの量は確実に増えています。50年前の台湾では、使い捨ての物はほとんどなく、母から鍋を渡されて豆腐や味噌(みそ)を買いに行ったものです。あの頃の生活スタイルに戻るのがいいのか、便利な生活を続けながらゴミを無害化し、地球を守る方法を見つけられるのか、大きなプロジェクトが人類に課せられています。

今年のEarth Dayに思い出したのが2014年に作ったピンクカー。東日本大震災の爪痕がまだ深く残っていた当時、原発からの放射能被害を受けた福島県の農産物が売れなくなりました。自然と共に暮らし、大地を守ってくれる農家の人がいるからこそ、私たちは安心して米や野菜、果物が食べられる。それはどこの国でも同じ。私はこの農家の人たちを応援したいと考え、「地球環境保護、自然との共存」をキャッチフレーズに広く協力を呼び掛けました。労働者たちから提供してもらった1万枚の軍手を素材にし、実物大の車の造形にして「労働への敬意と前進」を表現。1万人の気持ちが集結したピンクカーを福島に運び、一緒に農産物を販売したいと思いましたが、スポンサーが見つからず、東北での発表をあきらめ母国台湾で同様のイベントをしました。次の作品F1カーは、最先端のテクノロジーを象徴する携帯電話が素材、自然に優しい科学の進歩、地球の未来を考える作品ですが、続きは次回に。

(次回は7月第3週号掲載)

林世宝〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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