集夢計画7「一年の計は元旦にあり」

0

アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第9回

ハート集結シリーズ作品のひとつ「衣食住」。一般の人から提供された1000枚のジーンズが素材。(04年、クイーンズ美術館に展示)

新年明けましておめでとうございます。

1万2000本のペットボトルで作った「クリスマスLOVEツリー」を「集夢計画」の前奏曲として発表したのが昨年の仕事納めでした。私はこの数年、元旦に思う一年の計に始まり、それこそ一年中、夢のことばかり考えています。それは、映画制作を最終目標においた「集夢計画」を実現させるべく奔走しているためですが、一生懸命取り組んでも思うように進まないのが現実です。

一生懸命といって思い浮かぶ一つに、アメリカ移民の姿があります。特に、ニューヨークは移民の割合が多いのですが、夢を求めてアメリカにきても、現地人の倍以上の努力をしないと生活さえままならず、それこそ毎日が一生懸命。こうした移民の姿を、自分にも重ねあわせ、作品の題材に何度か取り上げました。

エリス島には移民博物館がありますが、設立のために尽力した日系人の話をご存知ですか。1982年から54年までアメリカの移民局であった建物を、老朽化を理由に撤去する動きがあった矢先、壁にある異国の文字に目を留めた人が、Dr. George 荒木氏に調査を依頼したところ、荒木氏は歴史的に価値があると判断。それは入国を拒否された人々が収容された施設の壁に残したもので、中には文学的に優れたものもあり、これをアメリカの歴史的遺産として残すべきと考えた氏は、建物の保存に力を注ぎました。その甲斐あって、修復のための予算が下り、現在の姿を留めているのだそうです。

歴史的遺産と同じように素晴らしい芸術作品も、世に出るチャンスを与えてくれる支援者なくしては生まれてきません。私は夢を実現してきた人にぜひお願いしたいのです。「周りの人の夢の実現に手を貸してくれることを」。そして、「集夢計画」の強力な支援者の出現を今年初頭の祈願とします。

(次回は2月19日号掲載)
林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

過去の一覧

Share.