〈コラム〉大学受験への道

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在米保護者への教育コラム 第36回
駿台 NJ校 校舎長 小村修一

一昔前に、大学受験において中高一貫校が圧倒的に有利と言われた時代がありました。高校受験がないためカリキュラムを前倒しに消化し高2までに高校内容の学習を終了、高3を大学受験のための演習に充てる。1年間徹底的に鍛え込むことによって、高い合格実績を出してきましたが、大学入試を突破するためには合理的で有効な戦略だと言えます。一方で、最近、公立校から難関大学への合格数が増えてきました。彼らは高1から高校内容の学習をすることになるので、それ程先取り学習ができる訳ではありません。しかし、高校受験の勉強にはカリキュラムの遅れを取り戻し、難関大学に合格する学力を身に付けるための十分な効用があるのです。

例えば高校数学でベクトルを用いて図形の問題を解く場合にも高校受験の際に勉強した図形の性質は常識として利用できねばなりません。ベクトルという新たな知識は確かに必要になりますが、それは表面的なことで、本質は与えられた図形の特徴をきちんと捉えきれるかどうかです。方程式を利用する場合も同様です。与えられた条件を如何に整理し式として表現できるかどうか、既知の量と未知の量の間に成り立つ関係を突き止めることができるか否か、がポイントになります。大学受験では高校受験と比べ、表現の手法として新たな知識が必要になりますが、それは大きな問題ではありません。大切なのは問題を分析する力です。そうした力が高校受験の勉強で十二分に鍛え込まれます。それが大学入試においても生かされるのではないでしょうか。

中高一貫校から大学を目指すか、高校受験を経て大学を目指すかは、帰国の時期によって受験そのものが左右される帰国生にとっては大変な選択ですが、しっかりと準備さえしておけば、どちらにも大きな可能性があると言えます。高いレベルで思考力を養うような勉強を普段から行い、急な帰国となっても慌てないように準備しておきましょう。
(次回は8月第3週号掲載)
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