トミー富田「ハーレム浅草下町考」Vol. 62
皆さんは、ハーレムのメイン通りの早朝の景色を見たことがありますか? 開店前、125丁目の下ろされたメタルシャッターには、とてもカラフルなアフリカン・アメリカンの様々な絵が描かれています。
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フランコは、80年代に私が初めて日本に連れて行って以来、20回以上来日し各地に絵を残している(5月表彰式で)
今からちょうど50年前、キング牧師暗殺による全米黒人の怒りは、各地で暴動を引き起こします。ハーレムも例に漏れず。暴力から店を守るために取り付けられた灰色の頑丈なシャッターには、落書きがびっしり、まるで監獄のようなその風景を嘆き、” Think Positive” 、明るい色彩で、閉まったシャッターに絵を描き始めたのが、私の40年来の友人、今やハーレムのピカソと呼ばれるフランコ、90歳です。
以来、125丁目東西に渡りずらっと描いたシャッターアートは200枚。ところが、ハーレム再開発計画により、現存するのはわずか25枚。5〜6年後には、全ての旧式メタルシャッターが撤去され、閉店後も店内が透けて見える新型シャッターに替わってしまいます。
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シャッターとフランコ(Photo by Yasuo Wakaiki)、写真展では、ディジーやライオネル他、今は亡きジャズの巨匠の素顔も
1970〜90年代、世界中から危険と避けられていたハーレムの街で、住民たちに希望と明るさを与え、世界中の観光客をも呼び込んだ彼のシャッター作品は、ハーレムの財産。2011年「チーム・フランコ」が結成され、NPOとして、これらのシャッターを保存する活動が進んでいます。どんな形でも結構です、応援して下さる方、是非、私までご連絡下さい。
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そしてもうひとつ。私のようにハーレムに魅せられ、1982~95年をカメラで追い続けた日本人写真家がいます。若生靖夫さん、現在ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病で動くことが出来きない父親に代わり、娘のまどかさんがその夢を継いで、ハーレムで念願の写真展を開催します。今のハーレムしか知らない人には是非、心豊かだったハーレムを見てほしいし、ハーレムが好きな人には是非、美しかった当時のハーレムを懐かしんでほしいです。
▪写真展情報
「WE LIVE IN HARLEM」 Photographed in Harlem from 1982~1995
6月14日(木)〜27日(水)
会場:Dwyer Cultural Center
258 Saint Nicholas Ave, on 123rd St, NYC)
入場:無料
〈筆者プロフィル〉トミー富田(トミーとみた) 東京浅草生まれ。ニューヨーク・ハーレム在住23年の音楽プロデューサー。1994年にアジア人初の「Dr.マーティン・ルーサー・キングJr.アワード」を受賞。ハーレム商工会議所会員。アポロ劇場ボードメンバー。20年以上続けている大人気の「トミー富田のハーレムツアー」は、日本からのファン、リピーターが多いことでも有名。
■トミー富田のハーレムツアー 電話:646・410・0786 ウェブ:tommytomita.com