〈特別編〉食べ物の大切さをもっと知ろう
瓜阪美穂「理学療法士が教えます」身体が痛い本当の理由【第30回】
健康な毎日を送るために何が必要かを考えると、食べ物や栄養の話は避けて通ることができません。私の仕事「理学療法士」は一見それらと関係なさそうに見えるかもしれませんが、健康について考えて勉強すればするほど、食べ物の大切さが分かってきました。
当院では腰痛、頭痛のため来院されている患者さまに内臓の筋膜の治療を行うこともあり、治療過程を観察していると食べ物がどれほど体の痛みと関係しているのかに気づかされます。私自身、自分の体が小麦の種類によって首の痛みをコントロールできることに気づき、食べ物についてさらに興味が出ました。
最近ではオフィスにも食材選びや食べ物の話を説明したリーフレットを置いています。そこにも書いた重要なポイントをご紹介します。
重要なポイント
(1)ラベルをチェックして「原材料リスト」が短いものを選ぶこと。リストが長いということは、余計な薬剤や化学調味料が入っているということなので、加工食品は控えめにして自分で料理をしてみましょう。
(2)植物性の食べ物を中心に主軸を野菜にして、ナッツやたね(種)類、フルーツなども組み合わせてバランスを取りましょう。
(3)アルコール・砂糖・カフェインを控えめにして体内の炎症を減らしましょう。
この三つに気をつけて食べるもの選ぶ・作るだけでも、違いが出てくることでしょう
ローカル野菜で栄養補給
ホウレン草は収穫されてから8日間経つと葉酸が半分になってしまうのを知っていますか? カリフォルニアからくる野菜は皆さんの手元に到着するまで1週間かかります。収穫した瞬間から栄養素が減っていくので旅の距離が長いほどあなたのお皿にある栄養は少なくなります。
米国に輸出するために大量生産して海外から運ばれてくる野菜を食べるのではなくローカルの農家が一つ一つ手間をかけて作った野菜を食べれば、同じ分量を食べるだけでよりたくさんの栄養が取れるでしょう。ローカルと呼べるのは通常250マイル(約402キロ)以内で取れた食材のことを言います。
また旬のものにはたくさんの栄養が含まれているので、なるべく季節のものを食べるようにしましょう。さらに季節の野菜はローカルフードの可能性も高くなります。例えば、冬に売り出されるスイカはどのくらい長い距離を旅してきたのか想像してみてください。ニューヨークではファーマーズマーケットがたくさんあり、旬のものを簡単に手に入れることが出来ます。近くのファーマーズマーケットを探すには〈GrowNYC.org〉もしくは〈DowntoEarthMarkets.com〉を利用するのがお勧めです。
牧草で育った牛
お肉をどうしても食べたい方は、鶏肉でしたら(Pastured/pasture raised)、牛肉でしたら(Grass finished)と書いてあるものだけを買うことをお勧めします。この表記があれば、肉になるまでの間ずっと牧草で育てられました、という意味です。ステーキハウスで出される(USDA Prime)というお肉がおいしいお肉のように言われていますが、これは草で育てていないので要注意です。米国人が思うおいしいステーキは、油がベタベタしたもので和牛の霜降りとは異なります。来院される患者さまの中からもニューヨークのステーキはおいしいけれど必ず胃がもたれるというお話を伺います。
牛は外で草をむしゃむしゃ食べて育つ動物なのに、米国では何十頭もまとめて暗いビルの中に詰められ、栄養素が少なく糖分が多い過剰食料のコーンを食べさせられています。この不健康な牛を食べることで胃のもたれが起こり、大腸の筋膜が癒着し、腰痛の原因になっていることもあります。
こだわりを持って選ぶ
内臓に住んでいる細菌が変わることによって、体の状態だけでなくメンタルの状態も変わっていきます。体の動きが軽く、心の調子もよく、気分良く幸せに暮らすためには、自分が口に入れるものに何が入っているのか、どれだけの栄養が入っているのか…。こだわりを持って食べ物を選ぶことはとても大切です。
ニューヨークで質の良い食材選び、食と内臓に関してなど、さらに詳しく知りたい方は9月23日開催予定の「食と身体」イベントにご参加ください。
〈筆者プロフィル〉
瓜阪美穂(うりさか みほ) 理学療法博士、整形臨床スペシャリスト。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校を卒業後、南カリフォルニア大学理学療法博士課程を修了。ブロードウェイミュージカルのダンサーの理学療法士としても活躍中。米国の理学療法により、自身の身体に興味をもち、正しい動作を生活に取り入れることを目的に治療や指導を行っている。
★身体に関する皆様からの質問も受け付けています。
【ウェブ】https://omptny.com/ja/