日本の2作品が受賞
カナダのモントリオールで1日まで開かれていた第38回モントリオール世界映画祭で、女優の吉永小百合さん企画・主演の「ふしぎな岬の物語」(成島出監督)が最優秀作品賞に次ぐ審査員特別グランプリを受賞した。日本作品の同賞受賞は2011年の「わが母の記」以来。また、綾野剛さんと池脇千鶴さん主演の「そこのみにて光輝く」の呉美保監督が最優秀監督賞に選ばれた。
「ふしぎな岬の物語」は、吉永さんが初めてプロデュースを手掛け、海岸沿いの静かな集落を舞台に、吉永さん演じるヒロインが営む喫茶店に集う人々の姿を温かく描いた。同作はキリスト教関連団体が選出するエキュメニカル審査員賞も受賞した。
〈受賞の喜びの声〉
◇「みんなで作り上げた」
授賞式に参加した吉永小百合さんの話 本当にみんなで作り上げたものなので、映画に対して感動したと言ってくれたことが何よりもうれしい。一番にきゃーと言ってしまって、ちょっと恥ずかしかったんですが、最高の気分でした。世界でこの映画が上映されたらどんなによいだろうかと思っています。
◇「海外でも受け入れられて うれしい」
成島出監督の話 吉永さんを中心として、スタッフ、キャストが皆、心を一つにし、大変良いチームワークで作り上げることができました。人と人とが思いを持って「つながる」ことだけが人を救っていく、という普遍的なテーマが海外でも受け入れられたことを大変うれしく思います。ありがとうございました。
上映後、万雷の拍手
吉永さん、仏語で舞台あいさつ
モントリオール世界映画祭で8月29日、ワールドコンペティション部門に出品された吉永さんが主演する「ふしぎな岬の物語」の公式上映が行われた。上映後は約1000人の観客から万雷の拍手が起こった。共演の阿部寛さんと共に日本から駆け付けた吉永さんは舞台あいさつに立ち、感激の表情を見せた。
今回、初めて企画も手掛けた吉永さんは、上映前のあいさつで「みんなで心を込めて作り上げた作品。皆さんの心に届けば、こんなにうれしいことはありません」と流暢なフランス語であいさつした。
今回のワールドコンペティション部門には、同作を含む19作品がエントリー。同イベントは、ベルリン、カンヌ、ベネチアの世界3大映画祭に次ぐ北米最大級の映画祭。
近日、本紙で「そこのみにて光輝く」主演の綾野剛さんと、同映画祭に正式招待作品として出品された「東京~ここは、硝子の街~」主演の中島知子さんへのインタビューを掲載予定。
◆「ふしぎな岬の物語」作品紹介
人気作家・森沢明夫の小説を基に、のどかな里で小さな喫茶店を営む女店主と、店に集う人々との心温まる交流を描いた人間ドラマ。日本映画界を代表する女優・吉永小百合が「八日目の蝉」などの成島出監督と共同で、映画人生で初めて企画に挑戦した。
◇ ◇ ◇
こんな懐かしい里あったっけ!? 海の向こうに富士山を望む、のどかな里。花畑や学校、病院、教会が点在する中に、里の住人たちが集うカフェがある。その名も「岬カフェ」。漁師や農家、医師、牧師に警官まで、みんなのお目当ては、店主の柏木悦子(吉永小百合)が入れる1杯のコーヒーだ。悦子のこだわりは、何でも屋を営む、おいの浩司(阿部寛)と毎朝くんでくる小島の岩清水。悦子がお客さんの幸せを祈っていれたコーヒーを飲むと、みんなの心は軽く元気になるのだった。
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年9月6日号掲載)