日本の戦線拡大と敗戦の要因
諜報活動の面から解説
ニューヨーク歴史問題研究会は11月21日、「インテリジェンスと日米開戦への途―『開戦の詔書』と『近衛上奏文』にみる諜報謀略活動―」をテーマに第30回例会を開催。同会会長の高崎康裕氏が講師を務め、太平洋戦争に至るまでの戦線拡大と敗戦の要因を探った。
会の冒頭ではまず、昭和天皇の「宣戦の詔書」を紹介。そこには「残念ながら、米英と交戦することになったが、私の真意ではない」という内容が美しい日本語で書かれていると高崎氏は解説した。
また、宣戦布告の報道に際し、高村光太郎ら当時の著名人がどのように感じたかを例に挙げ、「日本は侵略国家の汚名を着せられているが、『詔書』からも著名人の言葉からも、喜々として戦争に至ったのではないということが分かる」と述べた。
「真意ではない戦争」に日本を引っ張っていったのが「インテリジェンス」とする高崎氏は、ソ連(当時)の暗号文を米国が傍受して解読した「ヴェノナ文書」を紹介。これは1995年に公開され、コミンテルン(各国共産主義政党の国際統一組織)の解説がされており、この公開によって、さまざまなことが明らかになってきたという。米中央情報局(CIA)のホームページからも閲覧できるが、日本人の関心は低いと述べた。
日中戦争におけるプロパガンダなども紹介した高崎氏は、敗戦は情報戦が左右したとし、「物量でなく、暗号解読で負けた」とした。その“土壌”となっているのは、疑うことを良しとしない日本人の国民性で「余りに無垢(むく)だった」と解説すると多くの人がうなずいていた。
太平洋戦争時代の諜報活動だけではなく「陰謀、策謀は今でも続いており、そこに気をつけて、日本の文化を正確に継承することが重要」と締めくくると、会場は大きな拍手に包まれた。質疑応答では、来年の戦後70年向けた展望を問うなど、あるべき姿に進む流れが見えない母国にいらだちを覚える声もあった。
次回例会は1月22日。同会の活動の詳細はwww.nyrekishikenkyu.org参照。
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年11月29日号掲載)