「教育勅語」取り上げ、日本人の“価値観”を解説
ニューヨーク歴史問題研究会は10月23日、「『教育勅語』が目指した日本人の姿―その精神が持つ今日的意味と陶冶の心―」をテーマに第29回例会を開催。同会会長の高崎康裕氏が講師を務め、「教育勅語」をめぐる課題について解説した。
会の冒頭ではまず、内閣府が2013年に行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」の結果から、日本人の若者に「自信や決断力がない」ことが現れていることを示した。09年に行われた高校生の意識調査でも同様の結果が見られ、日本の青少年の人生が希薄になっていることがうかがわれた。このようになった背景として「大人の力不足」と高崎氏は述べ、「歴史を彼方に置き去りにし、子供たちに語ってこなかった」からと続けた。
日本では敗戦後、連合国軍総司令部(GHQ)から、「戦争責任周知徹底計画」が行われ、日本人は「自発的な自己批判」をするようになったという。その中の一つに「教育勅語」の廃止があった。
廃止された「教育勅語」だが、高崎氏は「うたわれた『12の徳目』は道徳教育で、何が問題なのか」と述べた。また、その中の「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」を取り上げ、「これは国のために死ねと言っているのではなく、『国に危機があったなら、自発的に力をつくす』ということ」とし、東日本大震災で駆け付けた即応予備自衛官の例を挙げた。
高崎氏はまた、日本の伝統と普遍性が「教育勅語」には込められていると語り、この廃止で「日本人は価値観を欠落し、戦後民主主義は日本人をいやしくした」と述べると、会場の多数がうなずいていた。
日本では現状を見直そうという動きもあり、10月21日、中教審は道徳教育の教科化を答申した。高崎氏は「この道徳教育の内容は教育勅語が言ってきたもの。70年たって、このままではいけないという気運が出てきた」と紹介した。
「教育勅語」そのものの解説ではなく、それをめぐる話題を絡めての講演に、会場から大きな拍手が沸いた。質疑応答も活発に行われ、日本の若者の現状や、道徳教育答申への関心の高さがうかがわれた。
次回例会は11月21日。同会の活動の詳細はwww.nyrekishikenkyu.org参照。
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年11月1日号掲載)