NY歴史問題研究会 第33回例会

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「桜と日本人―もののあはれと漢意―」
戦後の日本における漢意を解説

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熱心に耳を傾ける参加者ら=4月23日、ニューヨーク(撮影:瀬尾)

ニューヨーク歴史問題研究会は4月23日(木)、4月例会「桜と日本人―もののあはれと漢意(からごころ)―」をテーマに第33回例会を開催。同会会長の高崎康裕氏が講師を務め、漢意という耳慣れない言葉を哲学的に読み解いた。
会の前半では桜がテーマとなり、その歴史と、日本人がなぜ、桜にひかれるのかが解説された。名所や「日本五大桜」の紹介から始まり、江戸時代の国学者、本居宣長の著作や、平安末期の西行法師の和歌にも触れ、ぱっと咲いてぱっと散る桜は人生を投影する対象だと高崎氏は語った。
後半では「もののあはれ」という情感を提唱した本居宣長が指摘した、「漢意」という価値観を紹介した。日本人が書物を残すにあたって採用したのは書字は中国の「漢字」という外国語だった。そこで、自国に、話し言葉と書き言葉の二重言語が存在するのを回避する上で「訓読とカナ」が採用された。この特異な経験が日本人の文化の根底にあると解いた本居宣長は自著「玉勝間」の中で、「物事を考える基準」を「中国」に置くことを漢意と“定義”した。
こうした考え方は現代にも通じ“現代の漢意”は「中国」に代わり「欧米」であると高崎氏。事実として正しいかどうかは別にして「欧米が言うのだから正しい」としてきた戦後の日本。日本国憲法の前文や日本の政治家の発言を取り上げ、具体的に紹介すると、参加者のうなずく姿が多く見られた。
米国などの考え方はわれわれの考え方と一致するのかと、よく考えてみる必要があると高崎氏は語り、歴史力を磨くことこそが、漢意からの脱却と解説した。最後に「靖国の桜」の紹介で締めくくると会場から多くの拍手が沸き起こった。

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講師を務めた高崎康裕氏=同

今回は日系人会の「サクラ・ヘルスフェア」に組み込まれていることもあり、初参加者も多く、女性も大勢訪れた。初参加者は「年齢とともに日本人という意識が強くなっているので、大変勉強になった」と語った。
次回例会は5月28日。同会の活動の詳細はwww.nyrekishikenkyu.orgを参照。

(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2015年5月2日号掲載)

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