「チカーノになった日本人」著者 ケイ・イノウエさんが代表
悩み抱えた子供預かる宿泊施設作りたい
獄中でカウンセラーの資格取得
神奈川県平塚市に、さまざまな悩みを抱える子供たちを救済する施設「HOMIE Marine CLUB(ホーミー・マリン・クラブ)」(homie-marine.com)がことし4月1日に発足、同20日に記念パーティーが開催された。当日は、同クラブ代表のケイ・イノウエさんの活動に賛同する約80人が出席。身体障害者も乗れるトライク(三輪バイク)制作に力を入れるロックンロールバンドのCOOLS(クールス)の佐藤秀光さんの姿もあり、会場には多くの著名人から祝いの花も届けられた。
代表のケイさんは、米連邦捜査局(FBI)のおとり捜査で捕まり米国の刑務所で12年8カ月にわたって服役した元暴力団員。当時の様子を描いた著書「チカーノになった日本人」(東京キララ社)は累計1万部突破し話題を呼んだ。
そんなケイさんが悩みを抱える子供を救済するきっかけとなったのは、獄中で出会ったチカーノと呼ばれるメキシコ系ギャングたちとの交流にあった。
刑務所で唯一の日本人ながらも、徒党に属さず暴れていたケイさんが、チカーノのボス「ビックホーミー」と出会い、家族を大切にし、仲間のためには自己をも犠牲にする彼らの生き方に、人生における大切なものを学んだ。親の愛情を受けずに育ち、暴力団員の道へ進んでしまった自身の経験から、同じような境遇にある子供たちを助ける道に進みたいと思うようになり、獄中にカウンセラーの資格を取得した。
出所後、日本へ帰国し、2003年、チカーノ系ファッションブランド「ホーミー(www.homie-japan.com)」を立ち上げ、同年、児童虐待相談を中心としたカウンセリングサイト(www.good-family.org)を開設した。
近年、全国各地で講演や個別相談を受けるなど精力的に活動している。
預かってる子に無理強いはしない
「最初は話すことも難しい。基本的に何が不満なんだ、何がしたいんだと無理矢理聞くことはしない。無理に聞いても子供はうそや作りごとを言いますから。相手から相談してくるまで、遊ばせておく。初島に連れていって、バーベキューをする、水上オートバイやバナナボートなどで遊ぶなど、好きな時に来て好きなだけ遊ぶ、そうして笑顔を作ってあげることが大切なんです」。
こうした子供救済の活動は全て無償で行われている。これまで行ってきた、親からの虐待やさまざまな悩みを抱えた子供を助ける活動の拠点として子供を預かるなどし、マリンスポーツやレジャーを通じて子供たちの精神=心を健全に導きたいという思いを込めている。
現在も引きこもりの男子を預かっている。長期間引きこもりだったというS君は、以前は人と会いたくないという気持ちしかなかったが、クラブで人と触れ合うことで、自分は変わったと話す。今では水上オートバイのライセンスも取り、今後はケイさんに恩返しができるように頑張っていきたいと意気込みを明るく話してくれた。
ケイさんの夢は、「悩みを抱えた子供たちを預かる、宿泊設備のある施設を作ること」。今回の発足はその第一歩だと話す。
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年6月21日号掲載)