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レコーディングエンジニア・八木禎治さんにインタビュー

夢を叶えるための一番の条件は情熱

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世界最高峰の音楽賞の一つ、グラミー賞。今年、日本人の八木禎治(Sadaharu Yagi)さんがレコーディングエンジニアとして携わったドラコ・ロサのアルバム「VIDA」が、第56回グラミー賞の「ベスト・ラテン・ポップ・アルバム部門」で作品賞を受賞した。八木さんは、2013年末には同作品の製作チームに参加し、「第14回ラテン・グラミー賞」も受賞している。

携わったアルバムが第56回グラミー賞受賞

「どうせ将来に希望がないのだから、せめて“カッコいい”道に」―。10代のころ、そんな理由だけで音楽関係の進路を選ぶ。九州芸術工科大学(現:九州大学芸術工学部)で音響工学を学んだ後は、ロサンゼルスに渡り、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のレコーディングエンジニア・コースで1年学んだ。渡米した理由も「なんとなくカッコいいから」。
それでも実際の米国生活は怖かったし、最初の数年は「英語ができず、孤独だった」。
卒業後、数々の音楽スタジオにインターンで働かせてほしいとのEメールを送り続けたが、日本人をわざわざ迎えるメリットがスタジオ側にはなく、空振りの連続。それでもやっと拾ってくれたスタジオが一つ。それが将来につながる第一歩となる。
そこでは「死ぬほど努力した」。人生で初めて本気で取り組んだ。「本当に本当に誠実に必死に努力している人には、何か返ってくるものだなって初めて知りました」
あらゆる価値観が大きく違う日本と米国。「その違いをメリットにするか、デメリットにするかだと思うんです」―。例えば日本人が真摯(しんし)に働く姿は、要領の悪いやつと思われる節もあるが、一生懸命やってくれる良いやつとも思われる。必死で働く姿に感動するのは日米間での違いはない。
18歳の時にグラミー賞受賞者を「カッコいい」と思っていた。今もそう思う。ただニュアンスは少し違うかもしれない。汗をかいて取り組んだ仕事を誰かが喜んでくれること、やっと作り上がった音楽を誰かが好きになってくれること。そんな仕事ができることが「カッコいい」。「今となっては賞の受賞自体が、一番大切なことではなくなってるんです。それよりも受賞のおかげで、僕のやりたい仕事に、作りたい音楽に興味を持ってくださる方が増えた。そのおかげでやれることの幅が広がったことの方がうれしいですね」
これから世界の音楽業界に出ていきたいと夢見ている後輩に贈る言葉は、と聞くと、「実は僕のやったことって、誰にでもできることだと思うんです。ただ、“行動”しないと、誰にもできない。日本はやりたいと言っても、周囲が止めますよね。まずは周囲の価値基準は早いうちに捨ててください(笑)。そうすると、世界が広がり、自分だけの価値基準ができていきます」
今後は日本の才能あふれるアーティストを世界に送り出す活動もしていきたいと語る八木さん。彼が作る音楽はこれからも世界を魅了していく。
【ウェブ】www.sadasound.com/
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年12月6日号掲載)


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