〈皮膚科〉ニキビもアトピーも正しい知識を持つことが大切
皮膚科専門医が日本語で親身に
全米にネットワークを持つ米国最多数の邦人クリニック、日本クリニックにこのたび初めて皮膚科専門医のフーン・チャン先生が加わった。長年日本で皮膚科専門医として活躍し、現在も主にニキビやアトピー性皮膚炎の治療、皮膚がん検診などにあたるチャン先生に、これらの症状や対策などについて日本語でアドバイスをいただいた。
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―紫外線などによる皮膚がんが気になる季節ですが。
日本人の皮膚がん発症率は非常に低く、また内臓系のがんに比べ転移しにくいので、早期に気づいて治療すれば恐れることはありません。ただ、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)は悪性度が非常に高く危険なもので、足の裏などの日が当たらない場所にホクロのようなものができていたら要注意です。
また、良性・悪性問わず「体に治りにくいキズや発疹がある」「昔からあるホクロが大きくなってきた」などの症状がないか、日ごろのチェックも大切です。他にもいくつかのチェックポイントがあるので、気になる方はぜひご相談ください。
―日本人に一番多い皮膚の悩み「ニキビ」について。
ニキビができる原因や過程を知ることはもちろん、一番大切なのはその治療法です。ニキビにはいくつかの種類があり、それぞれに適した治療が必要となります。中でも、跡が残る可能性があるニキビに対し、米国や欧米ではアキュテインという薬が初診時によく処方されますが、高価な上に妊娠中の人が服用すると副作用が出るリスクもあり日本では認可されていません。私はアキュテインを使用しない治療をお勧めしますし、それで十分きれいに治ります。また、自分で治療しようとする人もいますが、実は発疹だったという可能性もあるので、触らずに早めに診療を受けた方がよいでしょう。
―アトピー性皮膚炎で悩む人も多いようですが。
アトピー性皮膚炎とは、体の特定部分に慢性的に湿疹ができる症状で、実は自らの摩擦によって起こしているため、基本的には放っておくと自然に治癒します。
残念ながら、アトピー性皮膚炎の原因は解明されていません。世間では「アレルギーやハウスダストが原因」「一生付き合っていく病気」など不確定な情報が氾濫していますが、それらに惑わされないでください。アトピー性皮膚炎は治ります!
大切なのは、アトピーについての正しい知識を持つことです。治療薬としてはステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)が大半で、高い効用がありますが、塗り方に注意し長期間の使用は避けるべきです。薬に頼らず、体内の副腎皮質ホルモンの分泌を上げるために生活習慣に気を付け、また掻(か)く代わりに冷やす、皮膚を刺激する布素材は避けるなど日々の生活でのちょっとした気遣いが大きな改善へとつながります。
アトピー性皮膚炎に限らず、何よりも患者さんが病気に対する正しい知識を持つこと。同時に現状やどういう治療をして効果が出ているかを理解できるように医師がきちんと説明することが、症状改善や治癒への一番の近道だと考えています。
Dr.フーン・チャン(Hoon Chung MD)
延世大学医学部卒業、東京大学医学部付属皮膚科学教室で皮膚科研修終了後、東京で皮膚科医院を開業し10年間にわたり多くの患者を診療。また東京虎ノ門病院皮膚科でにきび専門外来も担当。日本語、韓国語可
情報
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【電話】212-575-8910(44丁目オフィス)212-532-8910(41丁目オフィス)【ウェブ】http://nihonclinic.com/japanese/index.html【住所】44丁目オフィス 15 W 44th St. 10Fl, NYC(bet 5 & 6 Ave)41丁目オフィス 16 E 41th St #6(bet Madison & 5 Ave(「WEEKLY Biz」2012年8月18日号掲載)