「木内酒造」 世界20カ国に輸出
“世界で一番飲まれているクラフトビール”との異名を持つ「常陸野ネストビール」。「清酒・菊盛」や2009年に梅酒日本一に輝いた「木内梅酒」を醸造する茨城県の老舗蔵元「木内酒造」が16年前、地ビール製造に乗り出し、誕生した。構想に18カ月を要した「常陸野ネストビール」の特徴は、苦味の効いた芳醇(ほうじゅん)な香り。日本地ビール協会主催の「インターナショナル・ビアコンペティション」をはじめ、各国で金賞を多数受賞。現在、年間2000キロリットル以上が醸造され、米国、北欧、アジア含む世界20カ国に輸出されている。米国では「Hitachino Nest Beer」の名で知られ、人気も高い。
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三つのこだわり
注目するのは「常陸野ネストビール」の三つのこだわり。
まずは醸造する〈水〉。酒蔵内の井戸から湧き出る水は発酵を阻害する鉄分や有機物質を含まない、最適な中硬水。蔵元の位置する茨城県の那珂台地は東にアユで有名な久慈川、西にサケで有名な那珂川に挟まれた水と緑の豊かな地。酒蔵から1キロほど東にある「酒井出(さかいで)」には万葉の昔、井戸から酒が湧き出たとの伝説がある。
二つ目は〈原材料〉。ビール造りに欠かせないのが麦芽とホップ。欧州で伝統的に醸造されてきた上面発酵ビール(通称・エール)を目指す同社では麦芽などの原材料は、全て本場のもの。麦芽はペールエール(Pale ale)は英国産を、バイツェン(Weizen)はドイツ産を使っており、アンバーエール(Amber ale)などにはベルギー産のカラメル麦芽と、それぞれ最上級品を直輸入し、使用している。各ビールの個性の演出のために材料の品質を使い分けている。最後は〈技術〉。一般的に日本の地ビールメーカーは大手のビールメーカーへ製造を委託する。しかし、酒コンクール最高峰、独立行政法人酒類総合研究所主催の全国新酒鑑評会で金賞を受賞するほどの清酒醸造技術を持つ木内酒造は、自社での醸造にこだわり、「常陸野ネストビール」を誕生させた。
名前 | 紹介 |
White Ale (ホワイトエール) |
ハーブ、スパイスの香り高い |
Pale Ale (ペールエール) |
英国産麦芽、ホップを使って醸造した本格的英国スタイル |
Weizen (バイツェン) |
バナナ、クローブの香りが織りなす香り高いにごり小麦ビール |
Sweet Stout (スイートスタウト) |
ローストモルトの香ばしさとほのかな甘さが印象的 |
Red Rice Ale (レッドライスエール) |
古代米「赤米」を使って醸造した |
Extra High(XH) (エキストラハイ) |
長期熟成に適した深い味わいの高アルコールタイプ |
Japanese Classic Ale (ジャパニーズクラシックエール) |
クラシックな味わいの杉樽(だる)仕込み |
Commemorative Ale (賀正エール) |
冬限定のスペシャルビール |
Amber Ale (アンバーエール) |
モルトの味わいとホップの苦味に香ばしさが加わった |
Real Ginger Ale (ジンジャーエール) |
高知県産生しょうがを使って醸造する正真正銘のジンジャー |
Nipponia (ニッポニア) |
日本古来の材料で醸造した |
DAiDAi Ale (だいだいエール) |
福来みかんの爽やかな香りとホップの持つ苦味とうま味 |
世界のビールコンテストで金賞受賞
各国のビールが集まりその味を競う世界最大のビールコンテスト「ワールドビアカップ2004」のハーブ&スパイス部門で1位に輝き、英国最大のビールコンペでは金賞を受賞した。
ほかにも、ビールの本場ドイツ、ベルギーでも金賞や最高位に輝き、世界各国で高い評価を得ている。
米国でも愛飲、欠かせない存在に
米国では「Hitachino Nest Beer」=写真=で知られる「常陸野ネストビール」。ニューヨークでは同ビールのキャラクター、“ふくろう”が描かれた常陸野トラックが頻繁に走っている。また、多くのクラフトビール好きが集まることで有名なブルックリンのビアバー「スパイテン・ダイビル 」(spuytenduyvilnyc.com)では、オーナーが「ホワイトエール」を一押しビールとして紹介。ビール愛飲家は、“オウル(=ふくろう)・ラベル”とオーダーするのが通だという。
ビール愛飲家らからもこうした強い後押しを受け、米国のビールシーンにネストビールは欠かせない存在になっている。
木内酒造 公式サイト:www.kodawari.cc
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年8月9日号掲載)