坪田信貴

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実は偏差値や学歴なんて大したことじゃないと思っています

「ガチ!」BOUT. 254

 

坪田信貴

 

通称「ビリギャル」として知られるベストセラー『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者、坪田信貴さん。処女作ながら累計111万部の大ベストセラーとなり、人気女優の有村架純さん主演で映画化もされ、観客動員数200万人を超える大ヒットとなった。現在も自らが主宰する塾で教壇に立つ坪田さんにお話を伺った。
(聞き手・高橋克明)

処女作 “ビリギャル” が大ベストセラー、映画化も大ヒット

先生ご自身、ご自分の周りの話が、ここまで社会現象になるとは思われていましたか。

坪田 もともとは書籍化なんて考えてもなかったんですよ。とはいえ、(主人公の)さやかちゃんには、「君が(大学に)受かったら、本や映画になるかもね」と当時話していました。そこから数年後、今度は不登校気味だった彼女の妹さんが入塾し、僕の部下の指導のもと、上智大学に合格したんですね。

ビリギャルと不登校の姉妹を、慶応と上智に合格させた。(笑)

坪田 二人とも出会った時から考えると、見違えるほど伸びました。そんな時、お母さまからお礼のメールをいただいたんですね。「先生だけが彼女たちの可能性を信じてくれた」っていう情熱的な感謝の手紙でした。それを読んだ時に本当に素晴らしかったのは、僕たちでも彼女たちでもなく、お母さんだったんじゃないかって、そう思ったんですよ。

合格して一番うれしかったのも、お母さんだったかもしれないですね。

坪田 そうですね。そしてお母さんとの出会いから含めてお返事を書いたら、その一連のストーリーが「めっちゃいい話じゃん! これ!」って思ったんです。で、さやかちゃん自身にも送りました。「これ、読んでみて」と。すると彼女も「めっちゃいい話だね!」というんです。

自分のことなのに。(笑)

坪田 そう(笑)。「なんか、泣けてきた!」って。その時に僕は、ぜひ世の中の親御さんたちに読んでほしいと思ったんですね。彼女のお母さんは、最後まで、娘さんを信じた。いかに親御さんが子供たちを信じて、声掛けするか、どういう目線でいるかの大切さをこれまでの経験から実感していました。そこで、このお母さんからのメールの「返事」を「STORYS.JP(http://storys.jp/)」というサイトに載せたんですよ。

最初はネットからだったんですね。

坪田 そうです。ただ同じような家庭の同じような親子に見てほしかっただけだったんですよ。で、それを掲載したのが、夜中の3時か、4時。翌朝には、僕の携帯電話の受信音が鳴りやまなくて、起こされたんですね。消しても、消しても、ブザーが鳴りやまないので、ケータイ壊れたかなって、見てみたら、そのサイトのアクセス(数)が数万ってなっていて。「なんなんだ!?」ってなりました。

数万アクセスですか。

坪田 そのリアクションが、自分のメールアドレスにくる設定になってたので、ケータイ鳴り止まないはずですよね。その日の昼には某大手の出版社から「書籍化」させてくださいのメッセージが来てましたね。(サイトに)アップしてから、7時間くらいですよ。なので、当初は、まだ周囲の状況が把握できずに、ドッキリか、詐欺か、どっちかだと思ってました。(笑)

(笑)

坪田 いや、いや、真面目な話。だってその日の夕方にはKADOKAWAさんからもオファーが来て、結局その日だけで大小合わせて5〜6社くらいの出版社からオファーをいただきましたから。

すごいですね…。

坪田 で、当のお母さんにまだ話してなかったんですよ。

当初は、お母さん宛てに書いたものでしたものね。(笑)

坪田 そう(笑)。書籍化の許可をもらうのが当然の筋だと思ったので、本人はまだ本文も読んでないけど、とりあえず電話して。「多分、お母さん、全国的に今、有名人になってますけど」みたいな。

お母さん宛てのコラムを、お母さんより先に数万人が読んでいた。(笑)

坪田 で、それぞれの出版社の方と会わせていただいて、その中でKADOKAWAさんの工藤編集長さんという方が、非常に誠実で、実績もあって、本質的な部分もすごく理解してくださっていたので、この人の下で書かせていただこうって。

坪田信貴

いきなりのミリオンセラーでした。そして映画化もされ、映画も大ヒットになりました。

坪田 映画化の話にしても、当初は実感ありませんでしたね…。

でも、先生のお話を聞いていると、先生のお仕事は、教育現場だけでなく、生徒それぞれの家庭環境も相談されたり。結果、日本の家庭の教育事情を一番相談されてきた方なのかなと思いました。

坪田 そうかもしれないですね。過去の積み重ねで、今があるのは間違いないと思います。

その先生だからこそ、作れた書籍であり、映画な気がします。

坪田 面白いのは、どんなに裕福な家庭でも、そうでない家庭でも、結局、抱えている問題は普遍的なんですね。ある意味で全て共通していたりします。本当に多くの家庭を見てきて思うのは、親子仲や夫婦仲がいいのが一番幸せだってことですね。「人を育てる」ってある意味簡単なことだと思うんです。子供なんて言うこと聞かないもんなんです。でもそこをガミガミ言っても始まらない。で、成長して自立した後にね、ガミガミうるさかった親のところに帰ってきたいと思わないじゃないですか。「完璧になりなさい!」って怒る前に、子供が生まれた時のこと思い出して欲しいんですよ。

健康だっただけで、幸せですよね。

坪田 そう。年齢を重ねるたびに、目くじらを立てるのは不幸せですよね。例えば、その子が大きくなって社会に出て、会社で「おまえは、何もできなくていい。そこにいてくれるだけでいいんだ」なんて言う社長っていないですよね。

絶対言わないです。(笑)

坪田 だから、この世の中で一人くらい「なんだっていい、今のおまえでいいんだよ」って言ってくれる人がいていいと思うんです。

なるほど。親くらいは。

坪田 世の中厳しいから、心配しなくても周囲が厳しく接してくれるはずです。傷つくこともある。そんな中で、どんな状態であっても「あなたは生きてくれているだけでいい」「それだけでありがとう」って言ってくれる存在がいてくれたら、それだけでお子さんは生きがいを感じられると思うんですよ。

今は、子供に対して、既にあきらめているか、とんでもない成功を期待してるか、どちらかの親御さんが多い気がしますね。

坪田 極端ですよね。

世間でビリギャル先生は、おそらく「成績の悪い生徒」の偏差値を上げるプロフェッショナル、だと思われていると思うんです。

坪田 はい。

でも…お話を聞くと…。何というか。逆というか…。

坪田 はい。偏差値なんか大したことじゃないと思ってます(笑)。大学ドコとか、成績どうとか、本当に二の次で。社会に出て何年も経ってるのに「ドコドコ大学出身です」とかアピールしてるほど痛いヤツはいないですよね。でも、事実として子供たちは、わけわかんない5科目で順位決められて、偏差値だなんだと序列を決められる。そこを僕は「こうすれば簡単にできるよ」「こんな風にやったらできるよ」って伝えることによって、子供たちに「あ、成長してる!」って思ってほしいだけなんです。

やればできる、ということを。

坪田 そうですね。いや、でも、「やればできる」もウソだと思うんです。やってもできないものはできない。だって僕が今からNBA(米プロバスケットボール協会)の選手になろうと思ったとして、どんなに努力しても絶対無理でしょ。

99.999%、無理ですね。(笑)

坪田 いや、100%でしょ(笑)。身長165センチのアラフォーNBA選手なんていますか。だから、みんな「やればできる」っていうのがうそだって分かった瞬間に、やらなくなるんですよ。

なるほど!

坪田 だから、正解は「やれば伸びる」―。(成功)できるかどうかは分からないけれど、伸びることは伸びるんですよ。

成功ではなく、成長を目指そう、と。

坪田 そうです。人は、ちょっとでも成長したら、前向きになる。そこに親御さんなりが目を向けてあげたら、さらに成長すると思うんですよ。それを僕は伝えたい。

先生が大人気なのが分かる気がします。先生ご自身のこの先の目標は何でしょう。

坪田 僕のゴールは実は、中学のころから変わってなくて。ひと言で言うと「世界史の教科書」に載りたいんです。

偉人、として。

坪田 いえ、僕自身ではなくて。僕の教え子が、この先、あらゆる分野で活躍してくれるとして、それがファッションの業界であったり、スポーツ選手であったり、ビジネスの分野であったり、それぞれの分野で成功して、自伝を書くとするじゃないですか。そこに「中学の時の恩師の坪田先生」とか「高校の時に出会った坪田さん」とか登場するわけです。(笑)

なるほど(笑)。彼らの自伝の登場人物として。

坪田 で、200年後くらいに、歴史家がそれぞれを見て「ここにも出てくる、ここにも坪田、こいつ何者!?」みたいな。(笑)

全然、ジャンルは違う分野の偉人たちなのに。

坪田 そうそう。で、そこで再評価される。僕はこれを世界史の教科書コバンザメ方式って呼んでるんですけれど。(笑)

坪田信貴

素晴らしいです(笑)。最後に先生はこのニューヨークという街にどのようなイメージを持ってらっしゃいますか。

坪田 大好きです! テンション上がりますね、来るたび、毎回。ビビッドだなって思います。生き生きしてるというか。

ちなみに先生の会社の名前も「ビビッド」ですね。

坪田 生き生きとしてほしいなって、大人が。目が輝いてる大人を一人でも増やしたい。大人になりたくないっていう子供がいるとしたら、それはその子の周囲の大人の目が輝いてないからだと思うんです。周囲の大人が生き生きしてたら、みんな「早く大人になりたい!」と思うと思うんです。そう考えると、ニューヨークは世界一生き生きとしてる都市なんだなって思うんですよ。世界一ビビッドな街。だから、将来的には、ニューヨーク校を開校したいなって思ってるんですよ。

 

★ インタビューの舞台裏 → https://ameblo.jp/matenrounikki/entry-12319393784.html

 

坪田信貴(つぼた・のぶたか) 職業:坪田信貴坪田塾 塾長
これまでに1300人以上の子供たちを個別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることで定評がある。名古屋で、「塾生の人生を応援する」というコンセプトの「坪田塾」を経営。中学生・高校生・浪人生が大学受験が対象。「地頭が悪い子などいない。ただ、学習進度が遅れているだけ。なので、遅れた地点からやり直せば、低偏差値の子でも1~2年で有名大学、難関大学への合格は可能となる」という信念のもと、学生の学力の全体的な底上げを目指す。
公式サイト:http://tsubotanobutaka.gdd.jp/
ブログ:https://ameblo.jp/tsubota-nobutaka/

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2017年10月14日号発行)

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