一瀬邦夫 インタビュー ゴールなんてない。これから先も行けるところまで

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一瀬邦夫

「ガチ!」BOUT. 269
ペッパーフードサービス代表取締役社長CEO 一瀬邦夫に聞く

「いきなり!ステーキ」のペッパーフード、日本の飲食チェーン初の米ナスダック上場

ステーキチェーン「いきなり!ステーキ」などを展開するペッパーフードサービスの一瀬邦夫代表取締役社長CEO。日本で300店舗近く展開後、ニューヨーク進出からわずか1年半余りで10店舗をオープン。日本の外食産業として初めて、米ナスダック株式市場に上場を果たした。業界の風雲児、その行動力と決断力で数々の偉業を果たしたカリスマ社長に話を伺った。(聞き手・高橋克明)

昨年、インタビューした際「2020年には米ナスダック(市場に)上場を果たしたい」とおっしゃっていました。延期するならまだしも、前倒しで今年に実現なさってしまいました。
一瀬 (言ったことを)忘れてました(笑)。2020年までに「1000店出店する」と言ったことだけしか覚えてなかったです。なので、うれしいですね。昨年5月に東証二部上場を果たせました。そこから3カ月で東証一部に昇格することができました。それも2年前から「東証一部に行くよ」って周囲に言ってきたから。口癖にして良かったと思ってますね。(笑)

2年も予定より早く実現させた勝因は何でしょう。
一瀬 東証一部に昇格した際にもね、同時にナスダックに申請するための準備をアメリカの会計士さん、弁護士さんにお願いしていました。東証一部に上場したばかり(のタイミング)で、条件的には全てそろっていました。上場(の実績)がないと、自己流で崩れるかもしれないところ、監査法人、弁護士、その方々の手間が省けた、ということもあったかもしれないですね。

米ナスダック上場は、日本の外食産業としては快挙です。
一瀬 (外食産業としては)初めてだし、日本企業自体、われわれで13社目ですから。外食産業としてはわれわれが1番ということを誇りに思ってますね。

ニューヨークという市場において、具体的な課題は何でしょう。
一瀬 出店にあたっては、ニューヨークが世界でいちばん厳しい場所だということは重々、承知しています。家賃も人件費も高い、コンペティターも多い。その中に切り込んだわけですから。そういった意味では、全てが課題です。でも、僕らは何度も何度も、ピンチを体験してはそれを乗り切って今があるわけですから。試行錯誤の連続ですね。その中で気がついたことは、アメリカの人たちも、ステーキ店に対する憧れを日本人と同じように持っているということですね。つまり「肉を焼けばステーキ」ということじゃなくて、ステーキレストランで食べるということ自体が喜びなんですね。なので一人ではまずお店に行かない。仕事でも、おもてなしとしても、ファミリーの記念日としても、ステーキを皆さん全員で食べる。ステーキを食べに来るだけじゃなくて、ステーキを食べる時間を楽しむ。つまり、安くさえ売れば大勢の人が食べるということじゃないということを教えられましたね。

アメリカ人にとってのソウルフード、だと。
一瀬 その一方で、日本でもそうであったように、ランチタイムに安くておいしいステーキを25分くらいで食べられれば、アメリカ人の方にも受け入れられて、彼らの食生活もまた変わるんじゃないかと、いう気持ちも(同時に)あるんです。

走りながら、試行錯誤するということですね。
一瀬 そうですね。ニューヨークの人が好んで「あそこに行くとステーキうまいし、早くて、30分~1時間で食べられるし、素晴らしいよ」というニーズが芽生えてくるまで、徹底してやっていく必要は感じていますね

もう一つ、昨年の取材時、印象に残ったのは「日本のステーキ店がニューヨークに進出するのは、パリっ子が寿司(すし)屋を銀座で開くようなもんだから、みんなに反対された」とおっしゃっられていたことなんです。
一瀬 でも、躊躇(ちゅうちょ)はなかったです。昔「山王ホテル」で働いてたでしょう。その時に、アメリカ人がどんなステーキが好みかを熟知したから。抵抗は今でもないです。

なので、メニューも日本のまま勝負している。
一瀬 そう。今回、ナスダックに上場したことによって(ニューヨーカーに)「日本のステーキ店ってどうなんだろう」って注目され始めたと思うんですよ。日本のペッパーフードサービスをこっちで上場したわけなので、そういう意味では興味を持ってもらえると思うんです。そこは(日本の日本食以上に)ある意味チャンスかな、と。

すでに世界で800店舗以上展開していらっしゃいます。それでも社長は打って出ることをやめません。
一瀬 気質じゃないかな。ここで終わったら、社員の夢も終わってしまう。社長が止まっちゃって、社員のキャリアや将来が終わるのはかわいそうですよね。

社長個人のゴールはどこでしょう。
一瀬 ゴールなんてないです。とりあえずの目標は定めても(最終的に)行き着きたいところは……分からない。今までだって、マザーズに上場して、東証二部、東証一部、そして今度はナスダック上場でしょう。これから先も行けるところまでって感じですね。

事実、ニューヨークに進出した外食産業でここまでのスピードで展開した会社は、かつてありませんでした。
一瀬 スピード(展開)だけはね(笑)。あとは業績が伴えば、最高ですよね。あのね、日本で僕たちは2014年の1年間で、東京、大阪を中心に(日本)全国で30号店まで出そうって言ってたんですよ。1年間で、ですよ。で、実際に(その年の)12月29日に虎ノ門で30号店(目)を達成した。だから、アメリカも思い切って、ニューヨーク、しかもマンハッタンの中だけで20店舗やるって言ってたんですよ。

データ的な根拠というより…。
一瀬 (さえぎるように)もちろんそれもありますけれど、まずは、やると決める。やろうと決めて、やる。そう考えたら…根拠はやっぱりあまりないかな。(笑)

根拠はなくとも、まずはトップの人間の感性で、目標を決める。
一瀬 てか、注目されるじゃない。メディアからもお客さまからも。実際、今年の(世界)200店舗もそう決めて、実際やれたわけだしね。(最初に)言ったことにより、多くの人から反響を頂きました。日本全国くまなく全部の県に出す。それによってJALさんにもコラボレーションの対象になってますから。

ということは、北米でもそのスピードは変わらず、
一瀬 アメリカの方々のニーズであるCAB(Certified Angus Beef Program)という高級肉を思い切って、安く、しかも厚く提供する。アメリカだと厚いお肉は、お値段も厚い(高い)じゃないですか。そこをリーズナブルで提供すれば、アメリカの方々にも浸透すると思ってます。

ニューヨーク10店舗目のマディソンアベニュー店で会見する一瀬邦夫社長=10月10日(撮影:徳倉)

ニューヨーク10店舗目のマディソンアベニュー店で会見する一瀬邦夫社長=10月10日(撮影:徳倉)

ニューヨークという街にはどういった印象をお持ちですか。
一瀬 極めて東京に似てると思います。確かに文化は違う。でも、ビジネス的には似てる。昨夜、割と高級なイタリア料理店に行った際、そこのウエーターはみんなヒゲも生やしていない、服装もきっちりしていて、物腰も柔かい。高級店はやはり洗練されています。(他州と比べて)ニューヨークだとそういう文化というか、習慣がある。そこを目指していくことができるということです。

なるほど。最後にそれだけエネルギッシュな社長ですが、若さの秘けつは何でしょう。
一瀬 肉を食べることです(笑)。あとは、昔話をしないことかな。常に先のことを考えてます。前向きに、前向きに、新しいことを。確かに同世代の人は疲れている人が多いかもね。

76歳には絶対見えないです。
一瀬 休日にスポーツカーでぶっ飛ばすのが楽しくてね。そういうところは若い人より若いかもね。(笑)

 

★ インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-12411531597.html

 

ニューヨーク・タイムズスクエアのナスダック本社前で、関係者らと記念撮影に応じる一瀬社長(中央)=10月10日(撮影:徳倉)

ニューヨーク・タイムズスクエアのナスダック本社前で、関係者らと記念撮影に応じる一瀬社長(中央)=10月10日(撮影:徳倉)

一瀬邦夫(いちのせ・くにお)
職業:株式会社ペッパーフードサービス 代表取締役社長CEO

1942年静岡市生まれ。幼少期から東京の下町(墨田区)に住み、高校卒業と同時にコックの修行に入る。山王ホテルの調理場勤務を経て70年、「キッチンくに」を開業する。
85年「有限会社くに」を設立し、代表取締役に就任。
94年 低価格ステーキ店「ペッパーランチ」のフランチャイズ展開を開始。
95年 社名を現在のペッパーフードサービスとし、株式会社に組織変更。
2005年 農林水産大臣賞「新規業態開発部門」賞受賞。
06年 東証マザーズ上場。13年12月「いきなり!ステーキ」銀座4丁目店開店。
14年 米国子会社「Kuni’s Corporation」設立。
17年2月「いきなり!ステーキ」ニューヨーク・イーストビレッジ店開店。
17年5月東京証券取引所市場第二部上場。8月東京証券取引所市場第一部上場。18年9月米国NASDAQ市場上場。
現在は、国内504店、海外322店(2018年10月末)を展開。
・社団法人日本フードサービス協会正会員
・社団法人日本フランチャイズチェーン協会理事
・西武文理大学特命教授
・ハウステンボス株式会社飲食部門顧問
・社団法人アジア経営者連合会副理事長
・外食アワード2014受賞

(2018年11月17日号掲載)

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