前田敦子

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この作品を通じて「身近な人」の大切さを感じてほしい

「ガチ!」BOUT. 238

 

前田敦子

 

出演作品『モヒカン故郷に帰る』がジャパン・ソサエティーで開催中の映画祭「第10回JAPAN CUTS!~ジャパン・カッツ!」のオープニング作品に選ばれ、来米した女優の前田敦子さん。作品と前田さんへの注目度の高さから上映券は早々に完売に。上映前には沖田修一監督とともに登壇し、英語であいさつをした。撮影時のエピソードや、大好きだというニューヨークの思い出など、前田さんと沖田監督にお話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

 

出演作「モヒカン故郷に帰る」、NYの映画祭で上映

まず監督にお聞きしたいのは、脚本の段階で、主人公の彼女役は前田さんをイメージして書かれたのでしょうか。

沖田修一監督 ちょうど書いてる時に、対談で前田さんとお会いして、(以前から、ドラマに)出ているのを見ていたし「いいんじゃないかな」と声を掛けさせていただいたんですけれど。

今回「マジ、妊婦キツいわー」なんてセリフがあったりして、今までにない役柄だったのではないでしょうか。

前田 でも、私自身がちょっと変わった人間だと思うので(笑)。人間味のある役を頂けてすごくうれしかったですね。

では脚本を頂いた時点で、すでに出演を決めたというか…。

前田敦子

前田 もうオファーを頂いた時点で。私、沖田さんの作品が大好きだったんですよ。とにかく監督の作品はかわいくて。なので、普通にいちファンなので、もうお話を頂いた時点で、「やったー!」って走り回りたいくらい、みんなに自慢したいくらいでした。

妊婦さんの役なので役作りには苦労したのでは。

前田 私はまだ経験したことがないので(笑)。もちろん分からないことばかりだったんですけれど、でも監督の奥さまがちょうど実際に妊娠されているタイミングだったので、いつも客観的にアドバイスしてくださったんですね。監督の中でとってもかわいい妊婦像をお持ちで、今はこんな感じだった、あの時はこんな感じだった、って。

監督 うん、うん……。そんなしましたっけ。(照)

前田 かなりしてくださいました(笑)。それがすごくリアルで、役に立ったんですね。そのアドバイスを自分の中で拾い集めていく作業がすごく楽しかったんですよ。

監督 確かに「妊婦ってホントにツラいから」みたいなこと言った気がする。さも自分が妊娠したかのように(笑)。でも、妊婦の大変さのシワ寄せが、いつもこっち側に来てたのを覚えてたんだと思います。(笑)

今の日本映画界は原作がベストセラー小説の映画化だったり、アニメの劇場版だったりが主流の中、監督はオリジナル脚本ということにこだわりを持ってらっしゃるのでしょうか。

監督 可能であれば、オリジナルからの作品を撮りたいというのが第1希望ではありますね。もちろん、そういった原作のある企画モノでも、面白そうであればやりたいとは思いますよ。でもオリジナル(の作品)をなかなかやれる機会がないので。そのあたりは頃合いを見ながら、うまくやっていければいいなとは思いますけれど。

今回、以前から希望された沖田作品に出演されて、ご自身の中で、今後の芸能活動はどのように変化されるのでしょうか。

前田 今回、私は勝手に思ってるだけかもしれないけど、(制作現場の)皆さんとすごく仲良くコミュニケーションとれて、すごく仲良く一緒にやれたのが、とってもうれしくて。その方たちといまだに連絡取りあっていけてるって、これから生きていく中で、何かとても大切なものを頂けたなぁって思ってるんですね。

なるほど。

前田 グループでお仕事させていただいてる時って、いつも撮影に追われて(それだけで)一日が終わるみたいな日が多かったんですけれど、今はそのスタッフの方々と親交を持ちながらお仕事をやらせていただけるようになったというか。特に今回は広島での撮影だったので、みんなと一緒にいるっていうのを、すごく肌で感じながら撮影ができたのがうれしかったですねー。今回、お仕事をする上で「やっぱり一番大切なことってコミュニケーションなのかな」ってあらためて思いましたね。

現場が非常に楽しかったことが伝わってきます。(笑)

前田 はいっ!(ニッコリ)楽しかったですねー。みんな、ずっと笑顔で撮影してました。

今日、今から上映会です。観客のニューヨーカーにはこの作品を見てどう感じてほしいでしょうか。

前田敦子さん(左)と沖田修一監督

前田敦子さん(左)と沖田修一監督

監督 そうですねー。結構、日本的な要素もあって、例えば「ピザのデリバリー」であったり「(熱狂的な)矢沢永吉ファン」だったり、そういう日本的なものを、どういうふうに感じるんだろうなって逆に興味ありますね。例えば“田舎に帰って、年老いた父親を看(み)取る”話って、世界中、どこの国でも同じテーマとして見ていただけると思うんです。

特にニューヨークは東京と同じで世界中の地方出身者の集まりですから。

監督 そうかぁ。そうっすね。そこまでは考えてなかったな(笑)。だから、そのへんを面白がってくれたら、もう、なんか、全然いいんじゃないかなって。

前田 大人になるとみんな生まれ故郷から離れるのが当たり前じゃないですか。故郷から離れて遠い地で頑張ってらっしゃってる方もいっぱいいらっしゃるでしょうし。でも、何かあっても、どんな時でも、いつでも一番の味方でいてくれるのが家族なんだなって、そんなとこを感じてほしいですね。だって、それって全世界共通じゃないですか。「家族」の大切さ。身近な人ほど大切だけど、それが当たり前になりすぎて日ごろ感謝の気持ちを忘れている。それに気付くには、とってもいいお話じゃないかと思っています。

前田敦子 監督はニューヨークは初めてということで、初のニューヨークはいかがでしょう。

監督 来た瞬間は、雑多すぎてよく分かんなかったけど(笑)。時間が経てば経つほど、みるみる面白そうな街に見えてくるなぁっていう印象です。あと、すぐに人が話し掛けてきますね。(笑)

店員も(笑)。通行人も。(笑)

監督 ああいうのは、ちょっといいなぁって思っちゃいましたね。

前田さんは、よく来られているイメージがあります。

前田 もう10回目くらいですかね(笑)。でも来るたび、例えばブロードウェイとか「なんなんだ!? この世界は!」って思いますしね。あと、今回、一人で電車に乗れるようになりました!

地下鉄に一人で乗っちゃうんですか。

前田 はいっ!(うれしそう)。それが楽しくて、楽しくて。早く、また乗りたい。

最後にニューヨークに住んでいる日本人にメッセージを頂けますか。

前田 私は皆さまがとてもうらやましいです。今回の滞在では、こうやってニューヨークでお仕事されている日本の方にお会いしたんですけれど、なんて、皆さん、前向きなんだろうって。ホントに、すごく勇気と刺激を頂きました。私もいつか住みたいです!

 

★インタビューの舞台裏★ → ameblo.jp/matenrounikki/entry-12182641127.html

 

前田敦子さん(左)と沖田修一監督

前田敦子(まえだ・あつこ) 職業:女優
1991年7月10日生まれ。『あしたの私の作り方』(2007年、市川準監督)で女優デビュー。映画初主演作『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(11年、田中誠監督)で第35回日本アカデミー賞話題賞(俳優部門)など、『苦役列車』(12年、山下敦弘監督)では第4回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。15年は『さよなら歌舞伎町』(15年、廣木隆一監督)、『イニシエーション・ラブ』(15年、堤幸彦監督)と出演作が続々と公開。さらにテレビドラマ『ど根性ガエル』(NTV)、舞台『青い瞳』と多方面で活躍。

〈監督紹介〉
沖田修一(おきた・しゅういち) 1977年生まれ。2001年、日本大学芸術学部映画学科卒業。数本の短編映画の自主制作を経て、02年、短編『鍋と友達』が第7回水戸短編映像祭でグランプリを受賞。06年、初の長編となる『このすばらしきせかい』を発表。08年、テレビドラマ「後楽園の母」などの脚本・演出を手掛ける。09年、『南極料理人』が全国で劇場公開されヒット、国内外で高い評価を受ける。12年公開の『キツツキと雨』が第24回東京国際映画祭にて審査員特別賞を受賞し、ドバイ国際映画祭では日本映画初の3冠受賞を達成。13年2月、吉田修一原作の『横道世之介』が公開。第56回ブルーリボン賞最優秀作品賞などを受賞。国内にとどまらず、海外でも高く評価される日本映画界の期待の監督である。

〈作品紹介〉
『モヒカン故郷に帰る』

『モヒカン故郷に帰る』(©2016 "The Mohican Comes Home" Production Partners, LLC)

『モヒカン故郷に帰る』(©2016 “The Mohican Comes Home” Production Partners, LLC)

瀬戸内海に浮かぶ故郷へ結婚報告に恋人と共に7年ぶりに戻った息子(松田龍平)が父(柄本明)や母(もたいまさこ)、弟(千葉雄大)とともに繰り広げる悲喜こもごもあふれる家族の物語『モヒカン故郷に帰る』。沖田修一監督のオリジナル脚本で、モヒカン頭の息子・永吉の恋人・由佳を前田敦子が演じる。映画は4~5月にイタリアで行われたファーイースト映画祭で2冠を獲得している。

 

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

 

(2016年7月23日号掲載)

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