ハリウッドも国内作品もカメラの前で芝居することは一緒
ジャパン・ソサエティーで出演作一挙に6本上映 「ガチ!」BOUT.125
7月中旬にニューヨークのジャパン・ソサエティーで開催された映画祭「ジャパン カッツ」。日本を代表する役者・役所広司さんの偉業を称え、主演作6作品が上映された。同祭にゲスト出演するため同地を訪れた役所さんに、自身の作品がニューヨークで上映されることへのお気持ちを伺った。
(聞き手・高橋克明)
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今回“役所広司デー”と称し、一挙6本の作品がここニューヨークで上映されます。お気持ちはいかがでしょう。
役所 もう久しく映画館の大きなスクリーンで観られていなかった作品をまた上映していただくことは、その作品にとって一番うれしいことだと思うんですよ。それにジャパン・ソサエティーという場所に対して、なんていうんだろう、憧れを感じてましたので、すごく光栄ですね。ニューヨークのお客さんに観てもらえることは、すごくうれしいです、はい。ホントは一緒に作った仲間たち(スタッフ)と一緒に観たかったなと思うほどです。
海外での映画祭での観客の反応はまた日本のソレとは違いますか。
役所 そうなんですよね。いろんな国の映画祭に行った際の反応は本当にそれぞれ違いますねぇ。それはもう、非常に面白いくらい。あのー、実は僕、自分の映画ってほとんど観ないんですよ。でも映画祭の時にはどうしてもお客さんと一緒に観ることになるんですけど、その時に自分が出た映画の面白さをお客さんから教わることって少なくないですね。あー、こんなとこが面白いんだなぁって。だから楽しいというか。
2日前のニューヨーク・タイムズでは役所さんの演技を絶賛する記事がかなり大きく出ました。
役所 うれしいです(笑)。うれしいとしか言えないんですけど、はい(照れ笑い)。そのライターの方は非常に辛口な方と聞いてたので。
日本では志村喬さん、三船敏郎さん、仲代達矢さんに並び、ハリウッドではジェームズ・スチュアート、トム・ハンクスに並ぶ、と。
役所 (笑)。なんでしょうね、うーん。まぁ志村喬さんにしろ、三船敏郎さんにしろ、僕の師匠でもあります仲代達矢さんにしろ、日本映画の黄金時代を築いてこられたそういった方々の影響を無意識にでも受けている(現役の)俳優さんはたくさんいると思うんですね。僕もその一人ですし、ファンでもあるので、それはもう。はい、うれしいとしか、やっぱり言いようがないんですけど(笑)。ホントに光栄です。
ハリウッドの作品にも何本か出演されていらっしゃいます。お気持ちの上で海外資本の作品と国内の作品、出演時に違いはありますか。
役所 そうですねー(しばらく考え)いや、一緒だと思いますね。違うといえば違うんでしょうけど。ただ、(米映画で)いくら大きなバジェットで、たくさんの人(スタッフ)を動員しても、カメラの前では役者が芝居するのは結局、一緒だと思うんですよね。仕事としては変わらないですよね。もちろん(ハリウッドにかかわらず)自分にできる、自分がその時期を賭けられるものと出合えば、それはもう出演したいとは思いますけれども。
海外から絶賛されていく中、今後の役所広司の目標を教えてください。
役所 そうですね、もう若い役はできないですからねー(笑)。年寄りの役を極めていきたいですね。今、日本映画はものすごく、テレビの映画化だとかアニメを原作にしたものが多いですよね。今回(上映)の「キツツキと雨」はオリジナル(の脚本)ですけれども、ものすごく少なくなってきていて。おそらく世界中の映画業界で、アニメやテレビの原作を映画化しているところは日本が一番多いと思うんですよ。確かにすでに売れている原作(の映画化)はほぼ興行収入も計算できて、(興行的に)成功するっていうのは映画界にとって大事なことなんですけど、片ややっぱりオリジナル(脚本)で映画館に来たお客さんに何が始まるか分からないような楽しみ方をしてもらえる映画がもっとあってもいいかなと思うので。うん、そこは少しこだわって、(今後は)そういう映画に積極的に参加していきたいとは思ってます。
最後にニューヨークという街の印象を聞かせてください。
役所 好きですね。そんなに来てないんですけど1年半ぶりくらいかな。でもプライベートでの僕の初めての海外旅行はニューヨークなんですね。もう25年くらい前で、当時は1ドル150円くらいでしたけど。(笑)
役所広司(やくしょ こうじ)職業:俳優
1956年1月1日生まれ、長崎県諫早市出身。96年の「Shall we ダンス?」「眠る男」「シャブ極道」で国内の14の映画賞で主演男優賞を独占。その後は日本を代表する映画俳優として、数多くの作品で主演を務める。最近の出演作は「十三人の刺客」「最後の忠臣蔵」「聯合艦隊司令長官 山本五十六」「キツツキと雨」「わが母の記」など。今年6月、芸術や学問で功績を残した人に贈られる紫綬褒章を受賞。「SAYURI」「バベル」など、ハリウッド作品にも積極的に出演しており、海外での知名度も高い。公式サイト:yakushokoji.cocolog-nifty.com
〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。
(2012年8月4日号掲載)