日本人が真の国際人になるために今後も貢献
「徹底的に耳から学ぶ」をテーマに掲げ1994年に創立された、語学教育・国際人財育成センター「アイベック ランゲージ インスティテュート(ibec language institute)」。今年で創業20周年を迎えた同社。これまでに利用された日系企業は320社以上。語学学校や英会話教室というカテゴリーから超越したカリキュラムで、国際社会で活躍できるビジネスパーソンを多数輩出してきた。同社の遠藤和雄社長に、高い実績を誇るカリキュラムやその基にある「ibec method」など、今後の展望についても話を伺った。
創業20周年迎えた語学教育・国際人財育成センター
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―起業前、ソニーの駐在員として来米し、各都市を回られる中で、ご自身の英語が全く通じないという経験をなさったとのことですが。
遠藤社長 学校で学んできた自分の英語に自信があったのですが、実際に現場に出てみると、本当に悔しいくらい思うように通じない経験をしました。日本の学校で教わる英語は目で見て手で書くだけの受験英語。生きた実社会・実生活に基づいた英語は、耳と口を使って会話する英語。二つの「英語」は似て非なるもので、聞ける・話せる英会話力を身につけなければ、アメリカ社会では全く役に立たないのだと、現実を突きつけられました。
―その時の経験が、アイベックの設立につながっているのでしょうか。
遠藤社長 はい。若い日本人のビジネスパーソンが、同じ悔しい思いをしないような、本物の英会話力が誰にでも身につく様な「理想の語学学校」を創ろうと思いました。
―では、ibec methodで学ぶと、なぜ「英会話力」が上達するのですか。
遠藤社長 ソニー時代に語学学習教材の開発に携わりました。その時、人間は言語を「音」で取得するのだと学びました。赤ちゃんは、しゃべれるようになる前にまず、聞き取れるようになりますよね。次に言葉を言えるようになり、会話できるようになってから「読み書き」ができるようになります。ところが、日本の受験英語勉強は「読み書き」中心ですから、「会話」はできるようになりません。
アイベックが開発したibec methodは、人間の成長の仕組みに従い、リスニングから強化していきます。つまり、人間が言語を習得する最も自然なステップを踏みます。
だから、誰にでも効果があるメソッドなのです。
―日本からやってくるビジネスパーソンに、現場でもっと活躍してほしいという願いから、アメリカ社会の常識やマナー、文化などについて学ぶ「アメリカ新生活セミナー」というクラスを作られたとのことですが。
遠藤社長 はい、実際の会話の現場では、例えば、「フットボールの試合でどのチームを応援する?」ですとか、「今度の選挙をどう見るか」など、アメリカ生活のありとあらゆるトピックが会話に登場します。そこで自分の意見をはっきり言えれば、あいつはなかなか面白いやつだ、また話を聞いてみよう!となります。ニューヨークに赴任される方は、各社のエースです。日本の将来を担う方々ばかりですから「あなた自身が英会話力を伸ばせば、あなたの会社の英会話力も伸びます。ひいては、日本の英会話力を伸ばすことにつながるのです」と、受講される方たちに最初にお会いした時に申し上げます。
―具体的なセミナー内容は。
遠藤社長 上級者向けのレクチャーでは、銃規制、移民問題、健康保険制度、宗教問題、テレビやインターネットなどのメディア論など、政治・文化から日常生活に至るまでさまざまなテーマを深く読み込み、講師も交じって皆で熱くディスカッションします。国際社会で真に活躍できるのは、日本人としてのアイデンティティーを持ち、かつ、これらの問題にも向き合える人材。世界に飛び出して活躍できる「次のレベルの日本人」がたくさん育ってくださるよう願っています。
―創業20年を迎えられましたが、今後の目標は。
遠藤社長 実は、今年の2月に、文科省の旗振りの一環で、早稲田大学の学生13人が来米。弊社が提案企画し、三菱東京UFJ銀行、三井不動産アメリカ、米国三井物産、ミキモトさんなどの協力を得て、国際企業訪問とビジネスプレゼンテーションを学び帰国されました。おかげさまで大変好評だったので、この研修は今後5年間続ける予定です。同様のプログラムを、日本のもっともっと多くの若い人たちに広げたいと思います。また、「国際人財育成センター」として、米国で働く日本人がもっと快適に仕事を進めていけるための「Business Communication Seminar」を、近々発表を致します。日本人が真の国際人になっていくために、これからも貢献してまいります。
〈プロフィル〉 えんどう・かずお 新潟県出身。早稲田大学商学部卒業。ソニーの海外トレーニー制度第1期生として来米。米国で働く上での英会話力や異文化理解の重要性を痛感し、1994年に「アイベック ランゲージ インスティテュート」を創設。家族は妻と一男一女。子供は結婚し独立。孫が3人。趣味は茶と勝海舟研究。座右の銘は「一燈照隅・万燈照国」。
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年10月4日号掲載)