NY倫理友の会「第15回年次総会」

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日本の「ルーツ」とつながる
その文明や精神性を今後の世界に発信

ニューヨーク・アスレチッククラブで行われた年次総会の模様

ニューヨーク・アスレチッククラブで行われた年次総会の模様

ニューヨーク倫理友の会(リンゼイ芥川笑子理事長)は5日、名門プライベートクラブとして100年の歴史をもつニューヨーク・アスレチッククラブで第15回年次総会を開催した。

ニューヨーク倫理友の会のリンゼイ芥川笑子理事長

ニューヨーク倫理友の会のリンゼイ芥川笑子理事長

リンゼイ理事長のあいさつに始まり、在ニューヨーク総領事・大使の髙橋礼一郎氏が祝辞を述べた。リンゼイ氏がユーモアあふれる理事の紹介などを終えると、メーンイベントである一般社団法人・倫理研究所理事長の丸山敏秋氏による講演がスタートした。

講演を行った一般社団法人・倫理研究所理事長の丸山敏秋氏

講演を行った一般社団法人・倫理研究所理事長の丸山敏秋氏

始めに、ニューヨーク倫理友の会の母体となる倫理研究所が、今年の9月に70周年を迎えたことを報告。節目の年において歴史の重みを感じながら今後も日本と世界に貢献できる事業を展開したいと述べた。
そして今年の講演のテーマは「日本のルーツとつながる」。まずわれわれは今、世界文明の大転換期を生きていることを紹介。経営学者のピーター・ドラッカー氏が著書で「この転換が2010年ないし2020年まで続く」と西暦をも明言していることに触れた。大きな転換期には混乱や不安が増すが、迷ったときは自分の「ルーツ」に立ち返ると見失っていたことが見え、未来へのヒントにつながるのではと提案した。
そこで日本のルーツ「縄文文明」についての解説となる。古く長い文明であり、それを証明する土器は縄目の模様や突起の飾りなど、実用性よりも精神的な何かを表現していることを示した。フランスの文化人類学者レヴィ=ストロース氏は、この「縄文精神」が現代も存続する日本的美意識の特徴となっているのではと著書で述べているという。

縄文文明からわれわれは何を受け継いでいるのか。それは(1)生命の根源に対する畏敬の心、その恵みに対する感謝報恩の心情(2)独特な美意識の深化と巧みな手技(3)和魂と荒魂のバランス─であることにたどり着くと丸山氏は探る。万物万象に神が宿るという思いや祖先への崇拝を、土偶や貝塚、日本語の擬声語・擬音語の豊かさに見ることができる。また日本人が相手の身になることが得意であること、それが日本の「ものづくり」につながることをボイラー発明者の田熊常吉氏やリンゴ農家の木村秋則氏を例に挙げて紹介した。そして特徴的な国土(風土)の中で、豊かでかつ厳しい自然環境で培われた心の強さも説明した。これらの文明や精神性は今後の世界に発信していく価値があり、じっくりと発信すればよいのではと呼び掛けた。参加者にとっては、それぞれの生き方を考える機会となった。

エピソードを交えながら、ジャズピアノの演奏を披露する秋吉敏子さん

エピソードを交えながら、ジャズピアノの演奏を披露する秋吉敏子さん

この後、フルコースメニューが振る舞われる中、世界的ジャズピアニストの秋吉敏子さんが登場。自らのエピソードを交えながら「Hiroshima Rising from the Abyss」など5曲を披露した。美しい演奏の余韻が残る中、会は締めくくられた。
(写真はいずれも5日、ニューヨーク・アスレチッククラブ=撮影:岩城)

(2015年11月14日号掲載)

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