〈コラム〉Dr. 鈴木の病める者を癒やせ【第5回】

0

日本人だけが信じるウソ

20年前にチェコスロバキアで肺がん検診の実効性を調べるための大規模追跡調査で、「肺がん検査を受けると寿命が短くなる」ことが実証されました。それから10年ほどたった頃、日本でも厚生労働省による調査が行われ、「毎年、肺がん検診を受けると、肺がんによる死亡率は半分になる」というインチキが、マスメディアにその結果と結論が大々的に発表されました。
「この調査は、肺がんで死亡した人が、過去3年間に検診をうけていたかどうかを調べただけで、そもそも調査の目的が「肺がん検診の有効性を証明する」ものではなかったのです。毎年の肺がん検診で死亡率が半分になるというのは、明らかなウソです。」(医療統計学などの専門家で新潟大学医学部教授(予防医療学)の岡田正彦氏)
肺がんだけではありません。例えば、日本人に多い胃がんについてもウソがまかり通っている、と岡田氏。日本の専門家が胃がん検診の科学的根拠に挙げているいくつかの調査データは、この肺がん検査についての調査と同じスタイルで行われたものだといいます。
日本人間ドッグ学会による「人間ドッグの現況」(08年版)によると、人間ドッグの年間受診者数は一日コースが全国で約280万人、2日コースが約25万人。これは、日本人の“検診信仰”を如実に表す数字でしょう。
欧米には人間ドッグという考え方そのものがありません。目的もなくなただ漠然と調査を行ってもコストがかかるばかりで無意味、というのがその根底にあるからです。
拓殖大学学長で経済学者の渡辺利夫氏は、人間ドッグに通っていた頃の心理をこう述懐されます。
「一種の確認恐怖症になっているんですね。検査で数字を確認しないと気が済まなくなっている。しかも、健康を確認したくて検査を受けていながら、その一方で異常値がないと逆に落ち着かないという矛盾も同時に孕んでいるのです。こんな心理は人間ドッグを受けなければ生まれません」
(筆者が寄稿したアスパラクラブ通信からの抜粋)(次回は1月第3週号掲載)

 

0719-eldersDr Suzuki Picture 〈プロフィル〉鈴木眞(すずき・まこと) 1935年生まれ。58年早稲田大学卒業。総合商社開発課長を経て日米合弁企業マーケティング担当取締役、日独合弁企業社長を歴任。のち脳血栓に倒れる。ゲリー・マーチン博士の指導によるビタミン・ミネラル投与法を実践して健康の回復に成功。米国ネーチャーズサンシャイン社日本代表などを務めた後、88年米国エルダース栄養科学研究所を設立して独自ブランド「M10-8」シリーズのサプリメントを開発。米国栄養薬理学界会員、栄養学博士(Ph.D in Metabolic Nutritional Science)。
ウェブ】www.eldersinternational.org

コラム一覧

Share.