早期発見可能で生存率約80%
第10回乳がんシンポジウム@ニューヨーク
日米両国で最新の乳がん治療法の情報発信や早期発見のための啓発活動を行う非営利団体(NPO)「BCネットワーク」(bcnetwork.org)は、10回目となる「乳がんシンポジウム@ニューヨーク」を4月22日、在ニューヨーク日本国総領事・大使公邸で開催した。
「BCネットワーク」乳がん啓発イベント
3人の専門家が講演
講師を務めたのはマウントサイナイ・ベスイスラエル東京海上記念病院長の桑間雄一郎医師、女性の乳腺外科医を増やすことにも力を入れている昭和大学病院・乳腺外科准教授の明石定子医師、若年乳がん経験者で、自らのブログで体調・治療生活・治療中のおしゃれなどについても掲載しているファッション工科大学(FIT)ファッション経済学准教授のキャッツ洋子さん。FCI―NYの久下香織子キャスターが司会を務め、髙橋礼一郎在ニューヨーク総領事・大使夫人の髙橋雅子さんがあいさつに立った。
日本人の乳がんの生存率は高い
桑間医師の講演では統計データを参照しながら、日本人女性の12人に1人が乳がんにかかるが、その生存率は79・3%と高いこと、高い生存率の裏には早期発見と治療方法の発展があることなどを共有した。また日本では乳がん検診の受診率が3割と少ないことを伝え、検診方法に完璧な方法がなく、日本では60%が自分でしこりを発見しているので自分の乳房をよく観察し続けることが大切と伝えた。
乳房の状態に合った検査が重要
明石定子医師は、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)を撮った時にどのように見えるかの画像を実際に見せながら、アジア人に特に多い、乳房が真っ白に写ってしまい、しこりの画像が見えづらくなる「高濃度乳腺」(英語ではデンスブレスト)について説明した。これからの時代は、その人の乳房の状態に合わせた検査を実施していくことも重要であると説明した。また、新しい検査方法「3Dマンモグラフィー」で撮影した場合の撮影画像も披露、乳がんにかかるリスクが高い人はMRI(磁気共鳴画像装置)で検査を受けることや、造影剤を使ったマンモグラフィー検査で発見率が上がる可能性も紹介した。若くして乳がんを発見した場合、抗がん剤治療を行うと、卵巣機能が落ちて妊娠が難しくなる可能性もあるので、治療の前に卵子の冷凍保存など、妊娠・出産に向けての対応も主治医に相談してからがん治療を始めることも可能と話した。
体験からおしゃれの楽しみ方を伝授
キャッツ洋子さんは自らの治療スケジュールや心境の変化を共有し、がんであることを変えられなくとも「どんな自分でありたいかは変えられる」と気付いた体験談を披露。ファッションのプロとして帽子やウィッグ、ターバンなどでどのようにファッションを楽しんだか、コーディネートの実例も加えながら講演、ウィッグや化粧のサポートを行うニューヨーク近辺の団体についても情報を共有した。
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休憩時間を挟んだ第2部ではパティシエの中西由恵さんによるフランスの菓子が振る舞われ、また、高校生の室内楽カルテット「Hilltop String Quartet」によるクラシック演奏と三輪万葉さんによる能の実演が披露され、参加者に能の手の握り方などを教えるなど、温かいムードの中、会は終了した。
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BCネットワークでは米国内3都市、日本国内4都市で、毎年乳がんの啓発イベントを主催しており、ニューヨークでも毎年イベントが開催されている。乳がん専門の医師やがん経験者などによる過去9年分の講演内容は全て同団体ウェブサイトを通じて見ることができる。
【ウェブ】bcnetwork.org/ (写真はいずれも提供)
(2017年5月27日号掲載)