国連について実体験交え紹介
拉致問題、日本海呼称 日本の問題も働き掛け
ニューヨーク倫理友の会(理事長・リンゼイ芥川笑子)は16日、毎年恒例の「春のランチョン」をマンハッタンのしんばしレストランで開催した。
今回ゲストスピーカーとして登壇したのは、国連日本政府代表部特命全権大使(次席常駐代表)の川村泰久氏。2010年から3年間ニューヨーク総領事館首席領事を務めたこともあり、集まった参加者たちへ親しみを込めた言葉で講演を始めた。
川村大使は講演で「国連はどういう組織で、何を大切としているか」を、実体験のエピソードを交えながら紹介。193カ国が加盟する国連で日本が強い信頼を得ている理由に、一国の一国の大使と会話する地道な努力を続けていることや、1990年代に政府開発援助(ODA)で日本が世界一の貢献国となった際のインパクトが今も続くことなどを挙げた。若き日に日本留学や自国の村が日本からの支援を受けた学びを経て、現在友好的な姿勢を見せるアフリカの大使の話など、具体的なエピソードも披露した。
会議の緊張感伝わる解説
また安全保障理事会の非常任理事国として、15カ国が集まる会議に参加する様子を小学校のクラスに例えるなど分かりやすくユーモアを交えて紹介すると同時に、その場の緊張感が伝わる解説で参加者らを引きつけた。
川村大使はまた、国連が設立以来、核や世界大戦を防ぎ、平和のための存在意義を発揮してきたことを述べた。その上で現在、直面している国家間の紛争やテロリズムの問題には、「根本的治療」として学校が攻撃されない環境を作るなどの平和構築を行っていることを述べた。また日本独自の問題として、北朝鮮の拉致被害者の声を国連に直接届けようと青いリボンのバッジを広めていること、日本海呼称を変えようとする動きに反論するなど、国連へ働き掛けていることなどを伝えた。
日本人国連職員増やす動きも
さらに日本人の国連職員を増やす動きがあり、週に1度、国連の職員が相談に応じる「オフィスアワー」や就職ガイダンスを設けていることなども紹介した。
会場の参加者は、川村氏の臨場感あふれる講演に真剣に耳を傾けたほか、食事を楽しみつつお互いの親交を深めた。
(2019年5月25日号掲載)