鼎談—南カリフォルニア×オレンジカウンティ×ブラジル 法人会会長
カリフォルニア州のガーデナ市内とオレンジカウンティ・アーバインでも毎月開催される「経営者モーニングセミナー」と「経営トップセミナー」。2月20・21日にはブラジル・サンパウロ倫理法人会・須郷清孝会長が講話を行った。セミナー後には須藤会長、南カリフォルニア倫理法人会・飯田たかし会長、オレンジカウンティ倫理法人会・ギラム真理子会長による鼎談が行われた。
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セミナーの感想を聞かせてください。
須郷 この機会に逆に勉強させてもらいました。2カ月ぐらい前から準備していましたが、このセミナーをすることによって、もっと倫理を勉強しないといけないなと感じました。
ギラム (須郷会長の)真面目なお人柄が、経営姿勢に現れていました。例えば支払いは即済ますなど。ブラジルの銀行の事情もあったと思いますが、倫理を学んでから実行する日本の経営者が多い中、それを前々からきちんとされていました。また、いろいろ文化が違う中で、われわれ日本人の特性・習ってきたものを経営に生かし続けているところに感銘を受けました。
須郷 普通の人でも、倫理を知らずにいいことを実行しているというのはたくさんあると思います。自分の場合は倫理を勉強することで、やはり正しいことは続けなければと感じました。ブラジルという複雑な環境の国で生きていると、真面目にやっていても環境に振り回されて、ついずれてしまうことがあります。でも倫理を学ぶとだめなことは明確になるので、ずれにくくなる。
飯田 その通りです。創始者の丸山敏雄氏が「生活の法則」と言っていますが、法則というのは後からつけたものです。万有引力の法則では、リンゴが落ちることは皆前から見ていたけれど、なぜ落ちるのかという法則をニュートンが見つけた。同じように倫理を学んだことで、実は前からやっていたけれど見えていなかったものが見えたということなのです。それがきちんと分かったことで、「体験」が生まれるのです。須郷会長の講話では「倫理を学ぶ前」「学んでから」「これからまたやること」と3段階に分けて話をしていただきました。苦難を喜んで受ける、チャンスをすぐつかむ、思い立ったらすぐ実行・即行など、もともとやっていたことを、倫理を学ぶことにより理解が深まり、体験が生まれ、良いことが返ってくる。そしてこれからも、できていないことをさらにやっていけばいいと。それがまさしく倫理の真髄です。
須郷 支払いは倫理をやる前から行っていましたが、「気が付いたことはすぐやる」ということは、倫理を学んで初めてよく分かりました。それをやることによっていろいろなトラブルを防ぐことができ、物事全てがとにかくスムーズに動きました。でもそれは倫理の中では基本の基本ですよね。
日本ではない、海外の日本法人として考えていることは。
飯田 アメリカでは、ニューヨーク、ニュージャージー、ジョージア、カリフォルニア、シアトル、ワシントンなど「ハブ港」で日本人のグループを作っていくこと。それに並行して英語の倫理法人会を作り、いわゆる地元の人たちに広めていくことを考えています。アメリカは移民の国なので、少なくとも英語、スペイン語、ベトナム語、韓国語、中国語、そういったバラエティーに富んだものができたら、アメリカから倫理を世界中に発信できると思います。須郷会長は、ブラジルで日本人がやっていた倫理の会をポルトガル語に直すことによって、一気に5拠点に増やしました。やはり現地の言葉が倫理運動を広めます。言葉の壁があり、高齢化が進んで次の世代に伝えられないという問題を乗り越えていきたい。まずは5年間で全米1万社を目指していこうと思っています。
ギラム 私たち(オレンジカウンティ倫理法人会)の場合、特に在米期間が長く、もともとアメリカの社会で頑張っていた人たちが多いです。日本語も全く話さず、環境は全てアメリカ。それが倫理に来て日本語を話し、懐かしい日本の環境に触れて新鮮味を感じます。やはり日本の文化はいいねと、アメリカからUターンして日本を見る。そのように、アメリカの社会で頑張る方々が戻ってくる、拠り所になっていけたらと思います。もちろん、そこから広げて倫理を深めていきたいです。
ブラジルはまた違った苦労があったのでは。
須郷 2009年に正式にポルトガル語の支部第1号がアメリカの州にできました。ブラジルは多民族で多様な宗教が入り混じる国なので、倫理と聞くとまず宗教だと思われて、かなり抵抗が強いのです。さまざまな国の習慣がある中、倫理をどう理解してもらうかというのは、いまだにつかめていない。いろいろやっては失敗しての繰り返しです。日本語の倫理を翻訳したものがうまく通じず、何度も直して時間がかかっています。
飯田 ポルトガル語版は日本語版とページ数も合わせている。われわれが日本版を見て何ページにこれが載っていますと言うと、ポルトガル語版でそのページを開くと同じ内容が書かれています。そういう努力もして訳されている。『職場の教養』も4冊、ポルトガル語に直し、ブラジルの会社は何社かそれで朝礼をやっている。その他の著書も10冊ぐらいあります。
須郷 倫理には独自の言葉がありますが、翻訳者は倫理を学んでない人です。ですから1回訳されたものを再度日本語と照らし合わせながら直し、ポルトガル語の文法を別な人に直してもらい、印刷の前にもう1度確認しています。ですから年間1~2冊しかできません。
2016年に法人会の日本国外支部として初の「南カリフォルニア倫理法人会」が設立されました。立ち上げの際には大変な思いもされたのでは。
ギラム 倫理には、何か言われたら素直に「はい」と受けるという基本があります。それでオレンジカウンティの会長をお願いしますと言われた時、「はい」と言ってしまったんです(笑)。それから一体何をしたいのか、何をすべきなのか、どんなことがあるのかは、後からでした。主人と経営している不動産会社との両立も難しいところです。
ご主人の反対はなかった?
ギラム 初めは「何それ、宗教?」と言われたのですが、「自分が変われば人も変わる」「夫婦は一対の反射鏡」ということをまず重点的にやろうと思いました。夫婦間のことと仕事の実績という二つに関し、まず実践して結果を出そうと。すると偶然かどうかは分かりませんが、ぱっと結果が出て数字に現れたのです。そしたら主人が「倫理でビジネスが伸びるなら、どんどんやりなさい」と。
倫理はどのように広がっていますか。
飯田 倫理には備えがあります。やろうと言っている間に備えられた人が出てくるのが倫理。こうしたいと思った時にその道筋ができていて、そこに人・物・金が来る。この前はベトナム語をしゃべる方が来たし、台湾から女性も来ていた。英語もいいけどベトナム・韓国・中国と、どう広がるか分からない。
ギラム 今日の須藤会長の講話でも、ブラジル生まれのコリアンの方が、英語と韓国語とポルトガル語を話し、今日はポルトガル語でごあいさつされていましたよね。
教えが普遍的で世界的に通用するものであるからこそ、人種や言語に関係なく広がるという感じですね。
須郷 ブラジルでは、サンパウロの倫理法人設立時に日系の会社があまり耳を傾けてくれなかったこともあって、どちらかというと今は日系よりもブラジル人を中心に広がっています。「家庭倫理の会」では95%ぐらいが純ブラジル人です。
問題は、ブラジル人がすぐ飽きてしまうことです。これはいいと入ってくるのは早いのですが、1〜2年でもう分かったと言ってやめてしまう。それをいかに続けさせるようにするかが今の課題です。日本のやり方そのままでは通じないということは覚悟しています。朝礼などは非常に難しい。『職場の教養』をポルトガル語に直して4年になりますが、朝礼を実践しているのはブラジルの会社3社のみです。日系の会社には「軍隊みたいでブラジル人は受け入れない」と頭から否定されました。今はブラジルの会社で、おじぎではなくハグしながらあいさつするなど、風土に合った方法を取り入れています。
飽きやすい人々をどうやってとどめていますか。
須郷 常に新しいことを入れなければいけない。本は常に出し続けなければいけないですし、説明も、同じことを繰り返すと「知っています」と出て行ってしまうので、いろいろな本からまとめて話さないとなりません。問題は体験ですね。体験が出てこないとそれを受け入れるのは難しくなります。
北米の日本人に、どのように倫理を普及していきますか。
ギラム 倫理の魅力は、拠り所になるということと、この考えだけで良いというところです。あまり他のことを考えずに『万人幸福の栞』を見直して、これで良かったとか、駄目なことは切り捨てていくと日々の生活がとても楽しく充実してきます。それを説得するより「変わったよね」「とってもうれしそうにしてるよね」「じゃあ一緒に」という感じで来てもらえたらいいなと思います。
飯田 今はとにかく露出度を上げたい。やはり宗教と間違えられるし、倫理がどういうものなのかは、なかなか説明しきれないものです。ですから倫理の経営セミナーがあるということを、ラジオや雑誌といった媒体を使って伝えていく。また『職場の教養』をレストランや美容室などに置いてもらう。そうやって露出度を高めて、見た人が「これいいね、どこでやってるの?」と聞いてきた時に初めて説明が生きる。向こうから来てもらうような仕組みを作ることが、普及の仕方としては良いと思うのです。
もう一つ、環境問題に対して「環境運動実践の会」というのを作り「ビーチクリーン」「ゴミ集積所の見学会」など行事を行っています。親子を対象にした夏の夜の星空を見るツアーもあります。またヨセミテ国立公園に隣接する250エーカーの砂漠を所有する人がいて、ここを動物や鳥の憩い森にしようという計画があります。そこにアメリカや日本の子供たちを呼んで林間学校をしたりする。それを今年スタートさせたい。環境はアメリカ人も非常に関心を持っているので、活動はアメリカの環境保護団体と一緒にやります。普及運動の輪を広げるための仕掛けのために、露出度を高めていろいろな活動に参加してもらう。書道や短歌といった文化活動も組み合わせ、倫理全体の活動として普及していけたら、皆が幸せになる。その幸せになる法則はここ(栞)に書いてあり、入会して実践した時にそれが何かということが分かります。
次はニューヨークだと思っています。
(2018年6月9日・16日号掲載)