古代シルクロードで愛された「東洋のハープ」を演奏
ニューヨーク倫理友の会の「第13回年次総会」(11月12日開催)にゲスト奏者として招かれ古楽器の箜篌(くご)を演奏するハープ奏者の菅原朋子さん。
箜篌とは、紀元前1900年ころにメソポタミアで発祥し、シルクロードを経て中央アジアを中心とする国々に伝えられた竪琴の一種。日本には天平時代(710〜794年)に伝来し、東大寺の寺宝として正倉院に収められた。しかし300年ほど前に箜篌は世界から姿を消し、現存しているのは、エジプトと正倉院にある破損したもののみ。その復元に、ニューヨーク市立大学教授や古代ハープ製作者とともに挑戦したのが、ハープ奏者の菅原さんだ。完全な形で残っている箜篌はないため、古代の絵に描かれた箜篌の形などを参考にしながら復元し、2008年に第1号が完成した。
12歳でハープの演奏を始めた菅原さん。父は琴の家元に生まれたが、自身は洋楽好きの母の影響で、今まで邦楽と無縁だったという。そんな菅原さんだが、正倉院に現存する東洋のハープ・箜篌を通じて、日本の音楽やシルクロードの音楽へと興味が広がっていった。
「西洋ハープとはまた違う、繊細でエキゾチックな音色です。弾いていると、まるでシルクロードを旅しているような気持ちになるから、不思議ですね」
現在、菅原さんは、13世紀のイスラムやスペイン、天平時代の日本など、箜篌が演奏された地域・時代の曲を研究しながら弾いているほか、作曲家からの楽曲提供も受けている。2010年には、自身初の箜篌CD「Along the Silk Road」を発表。今後も全米はもちろん、世界各地で演奏活動を続けていくという。
「どんな音がしたのか、どんな曲が弾かれたのかなど…。箜篌は謎だらけの楽器です。しかし国を超え、何千年も愛されてきたその音色に、魅力がないわけがありません。今後さらに研究を進め、より美しく再現することで、多くの方に箜篌を楽しんでいただきたいですね」と、菅原さんは語る。
(2013年10月19日号掲載)