今週は「シンデル法律事務所」
H―1B申請をとりまく厳しい現状
前回の記事では、H―1B保持者をはじめ、非移民ビザ保持者から永住権保持者まであらゆる外国人に対して、最近、ニューアーク・リバティー国際空港などでの入国審査が厳しくなっている、という現状を紹介いたしました。
当空港をはじめ、全米各地の国際空港では、入国の際、さまざまな質問がなされる旨との報告があるのですが、さらに米国境警備局(CBP)審査官をはじめとする政府機関は、スポンサー会社について、会社のウェブサイトやその他公共の資料を参考に、そのビジネスの内容を確認する場合もあるということです。従って、各企業はそれら公共の情報を常に正確で最新の状態にしておくことも重要となります。
このように、とりわけH―1B保持者に対する最近の政府の取り締まりは大変厳しいのですが、これに追い討ちをかける形で、移民局は今年初め、H―1B申請に関し、H―1Bスポンサー会社とH―1B従業員との間の正当な労使関係の証明を必要とする新たな規則を設け、現在では、実際それに基づいた審査が執り行われております。
最近の傾向では、この新規則によってH―1Bスポンサー会社は、H―1B申請に対する追加資料の要求(RFE)を受ける可能性が増えたと言ってもよいでしょう。さらに、移民局はH1?Bスポンサー会社への突然の直接監査を引き続き実施しており、最近ではニューヨークをはじめ、企業規模の大小関わらず、日系企業へ監査が入ったという報告を頻繁に耳にするようになりました。また移民局は、同じ会社に対して繰り返し監査に出向いているという現状もあります。私個人的には、なぜ移民局が同じ会社に対して繰り返しの監査訪問を行うのか、大変疑問に感じておりますが、とりわけ会社のH―1B申請および従業員管理に関するコンプライアンスが整っている企業に対する繰り返しの監査訪問にはさらなる疑問を感じています。
聞くところによれば、在インド米国大使館でのH―1Bビザ申請に対して、面接審査官は当ビザ申請が正当かどうかを確認するために、繰り返しの、また無関係の資料や情報を追加で求めるRFEを頻繁に発行しているようです。それら追加で要求されている多くの情報は、既にH―1Bビザ申請書に入っている情報や資料という報告もあり、それが事実であれば、このような実態があることは非常に不適切な状況といえるでしょう。
例えば、それらRFEの中には、一人のビザ申請のためにスポンサー会社の全従業員の給与支払い情報を求める場合もあり、とりわけ国際的に多くの従業員を抱える会社に対してなどは、明らかに不適当な要求ともいえるでしょう。事実、大使館面接に限らず、移民局申請に関し、弊社のケースにおいても、全員分の給与を知らせるような質問状を受けたこともあります。更に当大使館では最近、全てのフォームやサポートレターの一つ一つのセクションに関連する補足書類や情報が正当なものかどうか、矛盾がないか詳細に審査が行われています。これらは、ビザ取得前の克服しなければならない一つの大きな壁となっています。
(「WEEKLY Biz」2010年8月14日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web: