今週は「シンデル法律事務所」
H―1B監査に関する最新情報 その2
前回、H―1Bビザをスポンサーする企業への政府による厳しい監査活動が引き続き行われていることに関する記事を提供いたしました。今回もそれに関する記事を提供します。
実際に監査対象となった場合、政府監査員はH―1B職員のこと、また会社のことなど様々なことを確認するのですが、H―1B会社査察の対象となった場合、その対応をスムーズに進めるためにはどのような点に注意すべきでしょうか。いくつか具体例を取り上げます。
●監査に備えて米移民局(USCIS)また米移民関税執行局(ICE)監査員への対応を行う社内従業員を予め任命しておくこと
●H―1B保持者を含め全非移民ビザ保持者は、会社の自分のデスクにパスポートコピー(顔写真および個人情報が記載されたページ)、ビザの認可証、I ? 94フォームのコピーを常備しておくこと
●H―1Bスポンサー会社は、各H―1B従業員に対して、認証済みの労働条件申請書(LCA)、平均賃金額決定を示す書類、H―1B従業員を含む社員に対する会社給与支払いシステム表(または支払い基準)等を含むパブリックアクセスファイルを作成および管理しておくこと
●H―1Bスポンサー会社は、労働組合に対する必要事項を満たしていることを示す書類、またH―1B従業員と同じ職業区分で雇用を受けている米国人従業員に対する福利厚生の概要説明またその他関連書類を保管しておくこと
●H―1B申請に関わる書類は、H―1B保持者の就労最終日から後の1年間保管すること
●人事担当また監査に対応する職員は各従業員の雇用日、役職名、職場、給与額を把握しておくこと
移民局からの事前の通知があるなしに関わらず、会社が監査対象となった場合、監査に適切に対応できる法律の専門家を通して対応することが望ましいでしょう。また、I―9フォーム監査について雇用主が最も注意して準備すべきことは、そのフォーム自体を良く把握し、またその管理方法を理解することです。I―9については移民局から詳細なマニュアルも発行されておりますので、参考にすると良いでしょう。
最後に、実際に監査を受けた場合についてですが、その際、雇用主は監査に向けてI―9フォームを3日間以内に用意しなければなりません。政府によるI―9フォームの調査では、記載情報に漏れはないか、虚偽の記載は無いか等詳細に確認され、不適切とみなされた場合、その度合いによっては罰金刑が科せられます。罰金の範囲は書類上の違反に対する110ドルから不法労働者毎に科せられる1万6000ドルまで、その内容によって幅があります。
包括的移民法改革が理想どおりに進まない現在の状況において、このような2つの監査を通して、政府は正当な外国人雇用と移民法遵守の強化が得られると確信しています。更に、不法就労者個人への取り締まりよりもむしろそれら従業員を雇用する会社に責任の所在を求める取り締まり強化へ趣をシフトすることで、今まで以上に大きな効果が期待できるでしょう。
(次回は10月8日号載)
(「WEEKLY Biz」2011年9月10日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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