今週は「シンデル法律事務所」
雇用に基づいた永住権申請(1)
雇用を基に永住権を申請する場合、殆どの場合は会社などのスポンサーが申請者となり、永住権を受け取る本人が申請者とはなりません。「管理職として派遣されてきたが永住権を申請したい」というケースをよく聞きますが、会社の協力なしに永住権の申請はできず、ません。またスポンサーになる条件として、永住権を受け取る人材に給与を支払うに十分な能力があることなど様々な事項を証明しなければなりません。
日米経済が不安定な昨今、スポンサー会社も永住権申請者に対する賃金の支払い、およびその支払い能力の証明に対して今まで以上に気に掛けている場合が多いようです。そこで今回から2回にかけて、雇用を基にした永住権申請に関して、労働局および移民局の平均賃金の査定、会社の賃金支払い能力の審査状況について紹介したいと思います。まず今回は労働局の見解についてです。
平均賃金額の査定:雇用に基づいた永住権申請について、通常その第一ステップとして労働局に対して労働許可(PERM)を申請します。その際に最も重要なポイントの一つは、雇用主が永住権を取得する対象となる従業員に支払う平均賃金額または支払う予定の賃金(平均賃金以上)にどのように対応するかです。
この平均賃金額は、最終的には労働局が労働局基準に則って査定し最終決定するのですが、その決定において、役職名、職務内容、申請条件等を細かく確認します。中でも職務内容は非常に重要視しています。それは自身のH―1B申請にも影響が及んでおり、最近、労働許可(PERM)申請上の職務内容が学士号を必要としていない場合、それを理由にH―1Bビザ延長申請が却下となったという情報も聞いています。つまり、この情報を例に取れば、PERM申請中のH―1B申請についても細心の注意を払う必要があることを意味します。
なお、平均賃金査定の労働局への申請については同ケースで複数リクエストすることは可能ですが、その場合、仮に平均賃金額に異なる査定が下されても、雇用主は一番高い平均賃金を使用しなければならない、という見解を示しています。
社内人材紹介プログラム:PERM申請のプロセスにおいて、雇用主は申請の対象となる特定の職務に関して、求人活動を行わなければなりません。その求人活動の一つに、社内人材紹介プログラム(Employee Referral Program)もオプションとしてあり、自社の従業員を通して永住権申請のポジションにふさわしい米国人が見つかれば、その紹介した社員に報奨を与えるという制度の一つです。
その際、雇用主は社内人材紹介プログラムが実際に存在していることを労働局に対して証明しなければなりません。更に労働局は、社内人材紹介プログラムが会社としていつから実施されたかを確認します。なお特定の永住権申請の際、雇用主は申請上のポジションに対して人材紹介プログラムを使用した場合、それに関する通知が社内に掲示されたことを示す必要があります。
(次回は4月14日号載)
(「WEEKLY Biz」2012年3月10日号載)
〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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