母の基準は「生きていればいいじゃない」
(前回=9月7日号掲載=からの続き)
それはどこから来ているかというと、大連で生まれ育って、ハルピンでも北満(旧満州北部)でも暮らした、その経験からだと思います。
マイナス40度にもなる旧満州の厳しい冬も経験して、“蛮族”が襲ってきたり騎馬隊が来たりして、“蛮族”の首を取ると、日本人町の砦のところに、干からびるまで刺してあったそうで、そういう首が道端に落っこちて、それを見ても、何も感じなかったそうです。そういう体験をして、戦争を体験して、周りの多くの人が爆撃で亡くなって、そういう中で一度も住んだことのなかった日本に戦後引き揚げて来て、そこでまた人生を再スタートしたのですから。
40歳になった時、母は私に「これで満州と日本の生活が半々になった。けれども、日本だけが住むところじゃない、どこでも住めるし、どこに住んでもいいのよ。もし私が若くて戦争がなければね。私もいろんな所に住んでみたかった。ヨーロッパにもハワイにも。作織ちゃんはいいわねえ。戦争のない時代に生まれて本当に幸せだと思うけれども、それが永遠に続くとは思わないほうがいいわよ」と言われました。
戦争になった時に外国で暮らしていた、ということがどれだけ大変なことだったのか、それをつくづく経験して、すべてを置いて引き揚げてきて、命があってよかったっていう、そういう時代だったから、「今のこの平和な時代が本当にすごいね」と母はよく言っていました。
母の基準は「生きていればいいじゃない」。普通に日本で生まれて育った方も戦争ではすごく苦労したと思いますが、外地から引き揚げてきた人の苦労というのは想像を絶するものだったかと思います。「人生に100%は望めない。だから今持っているものを大切に、それに感謝して。それを失わないように頑張る事が大事で、無いものを欲しがったりしないように」ということも、母はよく言っていました。
(次回は9月21日号掲載)
かわの・さおり 1982年に和包丁や食器などのキッチンウエアを取り扱う光琳を設立。2006年米国レストラン関連業界に貢献することを目的に五絆(ゴハン)財団を設立。07年3月国連でNation To Nation NetworkのLeadership Awardを受賞。米国に住む日本人を代表する事業家として活躍の場を広げている。
(2019年9月14日号掲載)
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