乳がんと戦う5
少量のアルコールでも乳がんには明確な関連性がある
「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第136回
現在、米国の女性間で最も多く診断されている乳がんだが、以前のように乳がんの診断は最終宣告ではなくなってきている。現在、米対がん協会(American cancer society)が挙げている明確な2つの種類の罹患リスク、変えられないリスク要因と変えることができるリスク要因のうち、変えることができるリスクについての説明を開始しており、前回=7月6日号掲載=は変えられるリスクの第1項目として、“肥満は乳がんのリスクを上げる”ことを説明した。
変えられるリスク(2)アルコール摂取
通常、アルコール摂取に関しては、適度であれば、医療上、問題がない、と言われるのが米国でも普通である。が、米対がん協会によると、多くの人が知らない事実として、アルコールと多くのがん発生には明確な関連性があると説明している。このリスクは、アルコールの量と共に増加することがわかっている。
乳がん、アルコール、エストロゲンの関係
特に乳がんに関しては、このアルコールとの関連性が顕著で、1日に1杯のアルコールを摂取する女性は、摂取しない女性に比べ乳がん発症のリスクが約7%から10%増加し、2~3杯飲む女性の発症リスクは約20%も高くなることがわかっている。このように少量のアルコール量でも発症リスクがあることは、乳がんの特徴でもある。この理由は、アルコールが、エストロゲン濃度を上昇させる可能性があることがリスク増加の一因と考えられている。
他のがん発生とアルコールの関係
他のがん発生に関しても、アルコール摂取は関連性がある。エタノールはアルコールの飲み物に含有されているアルコールの一種であり、がん発生は、このエタノールがどのくらい含有されているか、に関連している。含有されるエタノール割合は飲料によってそれぞれだが、がん発生リスクは、このエタノールの蓄積された量となる。アルコール(エタノール)と関連がある乳がん以外の発症リスクがあるがんは、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がんなどである。
(次回=11月2日号掲載=に続く)
【執筆者】清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。