〈コラム〉減額措置は賃金同一法に抵触しないように注意を払うべき

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ワークスタイルについて(3)

「HR人事マネジメント Q&A」第9回
HRMパートナーズ社 副社長及びパートナー 上田 宗朗

前回=12月18日号掲載=では、遠方に移る従業員への待遇および大手企業は如何なる方針を導入したかについて触れ、それら従業員を減給するならばThe Equal Pay Act(以下「賃金同一法」)に抵触しないことが肝要だとお伝えしました。

復唱しておきたいのは、そもそも在宅勤務あるいは遠方での勤務など所謂リモートワークを認めるかどうかの決定権はあくまでも企業側にあるという事です。ワクチン接種を原則義務化し全日出勤再開の方向に動いている企業もあれば、今のまま在宅勤務とのハイブリッド方式を続ける企業もありますが、大手優良企業と言われるところは全日出勤再開に向けて強気の姿勢をとり、一方の中小企業は、他社以上の報酬を支払うならいざ知らず、現在大きな問題となっている人手不足の実情と相俟って現実に妥協しつつ従業員達に失望されないよう薄氷を踏むが如く方針を打ち出していかねばらないと考えます。

本題に入りますが、企業側が、在宅勤務あるいは遠方で勤務したいと申し出てくる従業員の給与を通勤時代の給与額から減額したいと考えるならば、賃金同一法に抵触しないように注意を払う必要があるのですが、以下に順を追って説明します。

先ず、同一従業員のそれまで得ていた給与額を変えるには第三者もが納得し得る「正当なビジネス上の理由」が必要になります。例として、(1)職務内容変更に伴う昇給/減給、(2)リーダーに就任し同手当を貰っての増額あるいはリーダーを降ろされての減額、(3)就労地域の変更による増額/減額、他に、(4)企業の売り上げ減からの一時減給措置や、(5)政府による最低賃金額の上昇に沿った増額、また(6)FLSA(公正労働基準法)によるカテゴリーの変更による時間給制から月給制に変わる際や、(7)FLSA改定によるExempt従業員のサラリーレベルの最低額が引き上げられた場合等が挙げられます。

もちろん米国には給与の増減を規制する法律がない事から給与を上げる下げるは企業側の勝手なのですが、但し正当な理由のないアクションを行えば、差別や不公平・不平等が理由の訴えを起こされる可能性が生じます。そして上記の如し理由を根拠にすべきと理解されるなら前回触れたように、今より生活費の安い地域に移るに際し給与額を下げるなら高い地域に移る際には増額しなければ一貫性の欠けるところとなり、また、遠方に引っ越すことで遂行できない任務が生まれ、その職務内容の差を理由に減給するならば、会社近くに留まり会社でしか出来ない職務がある時のみ出社する従業員に対しては、それが理由の減給措置は賃金同一法に抵触する可能性が生じます。

(次回に続きます)

(次回は2月26日号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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