〈コラム〉在宅勤務で生じる余計な出費は経費として認められるか(1)

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ワークスタイルについて(4)

「HR人事マネジメント Q&A」第10回
HRMパートナーズ社 副社長及びパートナー 上田 宗朗

前回=1月29日号掲載=では、従業員が今より生活費の安い地域に移ることを理由に際して給与を減額するならば、高い地域に移る際に増額しなければならないこと、また、遠方に引っ越すことで遂行できない任務が生まれその職務内容の変化を理由に減給するならば、会社近くに留まり会社でしか出来ない職務がある時のみ出社してくる従業員に対しては、それが理由の減給措置は賃金同一法に抵触する可能性があることをお伝えしました。要は給与額の多寡は「正当なビジネス上の理由」を掲げる会社側にその決定権があるものの、その「ビジネス上の理由」でさえ一貫性に欠けるところとなれば、大義名分たりえず深刻な問題に発展してもおかしくないということです。

今回は少し話題を変え、では遠方にしろ通勤可能圏にしろ、リモートワークを行う従業員たちが会社以外の場所で働く場合に発生する業務遂行に伴う金銭面での支出について触れたいと思います。

皆さんは、リモートワークを行う上で、例えば電話やWi─Fiなどの通信料金、PCなどの電子機器・照明・暖房などにかかる電気代、仕事机・椅子・キャビネットなどのビジネス家具代、これら家で仕事をする上で生じる余計な出費の大半は経費扱いになると思いますか? 申告すれば会社は認めてくれるでしょうか?

これに答えますと、カリフォルニア州は「雇用主は従業員の業務遂行上必要な経費の負担を行うべき」と明確に打ち出し既に法制化済みであり、イリノイ州、モンタナ州、ニューハンプシャー州、ノースダコタ州、サウスダコタ州など諸州にも同様の償還法が存在します。加えて、イリノイ州をはじめとする一部の州では、雇用主に対して、合理的な観点で従業員の経費を管理するよう取り決めた方針を設け、その方針を広く従業員に知らしめるよう文書化することまで勧めています。

従業員を自宅勤務にさせることで、会社はどこまでの費用を負担するべきか?は引き続き在米日系企業が悩んでいる点の一つですが、但しコロナ禍以前より既に私有車・携帯電話・PC及び周辺機器はそれら大半が経費支払い対象として必須扱いにされて今日に至ります。では普段出勤する時間に家にいることで余計にかかる電気代および職務遂行に必要な机や椅子などのビジネス家具類はどうでしょうか? 次回に続きます。

(次回は3月26日号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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